2030年代後半にはリアルな肉体を持つことも可能に

ほとんどの場合、レプリカントの体は仮想現実(VR)か拡張現実(AR)上に存在することになるが、2030年代後半にはナノテクノロジーを利用して、実際にリアルな肉体をもつことも可能になるだろう。2023年時点で、この方向の進歩はごく初期にすぎないが、すでに注目すべき研究は進んでいて、それが基礎となり次の10年に大きなブレイクスルーが起きるだろう。

レイ・カーツワイル著、高橋則明訳『シンギュラリティはより近く』(NHK出版)
レイ・カーツワイル著、高橋則明訳『シンギュラリティはより近く』(NHK出版)

最終的なレプリカントは、元の人間のDNAから培養した生物学的肉体に、人工頭脳学で強化した脳を収納したものになるかもしれない。そしてナノテクノロジーが分子スケールのエンジニアリングを可能にしたときには、生物学が許す以上の進んだ人工的な肉体をつくれるようになる。

2040年代はじめには、ナノロボットが生きている人間の脳の中に入って、その人の記憶やパーソナリティを形成するデータすべてをコピーできるようになるだろう。「あなた2号」の登場だ。

ここから先の実際的なゴールは、コンピュータと脳を効果的に結合させる方法を見つけ、脳がどのように情報を表しているのかそのコードを解読することだ。これは大いなる挑戦だが、2030年代の超知能AIツールが、今は手が届かないように見える多くのことを達成可能にしてくれるだろう。

コメントby SERENDIP

カーツワイル氏は本書で、驚くべき最新技術とその可能性を紹介しつつ、それらが実現する時の社会の混乱やリスクについても、「危険」と題する一章を割いて論じている。悪意を持った者がナノロボットを使って、誰かの脳に侵入しコントロールする危険性などは、当然考えられる。カーツワイル氏は「これらの進歩がもたらす科学的、倫理的、社会的、政治的課題に対処することができれば、2045年までに地球上の生命はよい方向に大きく変容するだろう」と述べている。例えば、死亡事故の可能性がある自動車を使わないという方向で、これまでの文明社会は進んでこなかった。リスクと利便性のトレードオフについて、われわれ一人ひとりが考えていかなければならないのではないか。

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