東京大学では、体育の授業が必修科目になっている。そこではどんな授業が行われているのか。東大カルペ・ディエム『東大1年生が学んでいること』(星海社新書)より紹介する――(第2回)
東京大学駒場Iキャンパス正門
東京大学駒場Iキャンパス正門(写真=Kakidai/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

東大の1年生全員が「体育」を履修する

体育

東大の1年生が全員履修する科目が「身体運動・健康科学実習I」、通称「スポ身」です。正式名称で呼んでいる東大生は誰一人いないのでは……というくらい「スポ身」という通称が普及しています。

この講義は、高校までの教科でいう「体育」のような講義です。週に1コマ、体を動かすことが東大1年生のカリキュラムに組み込まれているということです。

2度の体力テスト、身体機能に関する座学などの全員共通の部分と、バスケットボール、バレーボール、フィットネス(筋トレやストレッチ)など自分で種目を選んで参加する部分から構成されています。

筆者は高校まで文化部で、あまりスポーツに慣れ親しんでこなかったので、漠然と何かスポーツがしてみたいなという気持ちがありました。サッカーやバスケはそれなりに経験者がいて実力の差が出てしまいそうなイメージがあったため、あまり経験者がいなそうで、自分のような初心者でも試合に参加できそうな、ソフトボールを選択しました。

ただ運動するだけではない

「なんで東大にも体育の授業があるんだ?」と最初は疑問に思っていました。実際、最初の講義で体力テストを行ったのち、数週間は普通にソフトボールをするという時間が続いていたので、高校までの体育と同じように感じていました。

しかし数週間授業をしたところで、しっかりと東大チックな話が差し込まれました。スポーツという分野においての考えをレポートにまとめることを求められたのです。

例えば筆者のグループでは、「子どもがボールを投げる力の低下傾向が続いていること」についての論考を求められました。

実は、1960年代の子供たちと比較すると、11歳男子のソフトボール投げは65年度が「34.40メートル」、それに対して2019年度は「26.65メートル」と大幅に小さくなっているのです。この原因は何なのか、そしてこれがどのような影響を及ぼす可能性があるのかを考察する、というものです。

体育にもそんなふうに考察することがあるのか⁉ とびっくりしたわけですが、これが意外と面白いんですよね。