実は東京ドーム約7000個分の土地を持っている

森林環境資源学

東京大学の保有する土地の面積は、約3億2600万平方メートル、東京ドームに換算すると約6969個分にあたるそうです。このうち、駒場キャンパスが約35万平方メートル、本郷キャンパスが約55万平方メートルなので、東大の保有する土地の大半が「キャンパス以外」であることがお分かりいただけるでしょうか。

実は東大は、北海道や山梨、静岡など7カ所に、広大な森林を演習林として保有しているのです。東大の総面積の99%が演習林だと言われています。

東大の授業の中には、実際にこの演習林に赴き、自然の中でフィールドワークを行うものがあります。「森林環境資源学」もその1つです。教室で森林環境の保全に関する講義を受講し、それから1泊2日のフィールドワークに参加して、教授を交えてディスカッションを行います。

授業の流れとして、まず普通の科目と同じように、教室で全8回の講義が行われます。森林がどのように形成されたのか、経済・経営という観点から見た森林、資源という観点から見た森林、防災という観点から見た森林……というように、森林がどれだけ多様な側面を持ち、自分たちの暮らしと密接に関わってきたのかを学びました。森林を取り巻く行政施策や法制度まで学び、改めて「森林」という存在を捉え直す時間となりました。

東大が求める人材

この授業で、普段目にしている自然環境に対しての無知を痛感させられました。まず、森という存在がどれだけ日本という国土の保全のために必要なのかということ。ただ木が生えている場所というわけではなく、その森があるおかげで、洪水や土砂崩れが防がれているかもしれないのです。そしてそれが今とても危機的な状態になってしまっている、というのは衝撃的でした。

そして、この授業の最大の特徴はやはり、実際に東大の演習林でのフィールドワークです。フィールドワーク先と日程は複数用意されており、それぞれ定員が決められていましたが、筆者は千葉県の鴨川にある演習林で、森が健康か不健康かを調査することになりました。

森林の研究をする人
写真=iStock.com/tdub303
※写真はイメージです

実際に森を歩き、森林内の明るさ・下草の種類などを調べ、健康指数を算出したのです。普段目にしている森が、もしかしたらすごく不健康な状態なのかもしれない、ということを実感して、とても恐ろしくなった記憶があります。

レポート課題では、「石木ダム」という佐世保市のダムの建設に対しての意見を述べよ、という問いが出されました。石木ダムは建設についての反対意見もあり、この授業内容を踏まえて賛成か反対かしっかりと考えよ、ということです。

ダム建設についての議論はニュースでよく聞きましたが、それに対して自分で考えて答えを出すというのは新鮮で、東大の授業は社会問題への自分なりの考えを導ける人を求めているんだ、と感じました。