「たるみ」「ほうれい線」は、細胞の再生力の衰えから

【4】「顔のたるみ」:皮膚負債

「顔のたるみ」「ほうれい線」は単に見た目だけの問題ではありません。皮膚をふくよかに見せる真皮の繊維芽が細胞の活力の低下、そして皮膚組織が線維化していることを示しています。夏場でもあまり汗をかかなくなった、手がカサカサする、というのも皮膚(皮脂腺や汗腺)の老化の現れです。

伊藤裕『老化負債 臓器の寿命はこうして決まる』(朝日新書)
伊藤裕『老化負債 臓器の寿命はこうして決まる』(朝日新書)

皮膚は、細胞リニューアルの激しい臓器で、皮膚の衰え、皮膚負債は、体全体の細胞の再生力の衰えを表します。顔色がいい状態は皮膚負債が小さいことを示しています。ちょうどお金の負債が少ないほど晴れやかな顔になるのと似ています。

晴れやかな人間には多くの人が近寄ってきます。コミュニケーションが盛んになります。

実際、入院中の方、介護を受けている方でも、お化粧すること、散髪することで元気づく方も多いです。

ソーシャル・コネクティビティーの高さは幸福感、ウェルビーイングにつながります。それがなくなると、難聴と同じく孤立を引き起こします。孤立は、うつ、引きこもりを生み、肥満、糖尿病、高血圧などの原因となります。そのリスクの大きさは、タバコ、飲酒などに匹敵します。

「相手の話を聞かない」のは脳負債の始まりのサイン

【5】「人の話を聞かない」:脳負債

・腹を立てやすい、人の意見を聞かないという状況は、その人の脳の力の低下を表しています。「脳負債」の現れです。人の話を聞く、理解する力が低下しているから、自分のことしか言わない、人の意見を取り入れて自分の意見を柔軟に変えられない頑固さを生みます。人の話をさえぎって話をするというのは脳負債の始まりのサインです。

・同じ話を何度もしてしまうのも脳負債の現れです。「その話はこの前聞いた!」と言われることが増えてきたら、その兆候ありです。

いぶかしげな表情で電話をしている女性
写真=iStock.com/seven
※写真はイメージです

・夫婦げんかが増えてきたというのも、脳負債の始まりかもしれません。

・「年寄りだと思ってバカにして」のような言葉が出てくるとすれば、それはかなり進んだ症状です。内心、自分の体の衰えを感じているからこそ、つい被害者意識が高まってしまう状態です。

こうした症状は、本人はなかなか気がつきにくいものです。まずは、誰かと話をする時には、努めてその人を“ほめる”ように意識するのがいいと思います。ほめるためには、相手を観察する必要があり、ほめられた相手もうれしくなり、話が弾みます。それがなかなか難しそうであれば、最低「そうやね」と相手の言うことに相槌を打つ努力をしましょう。

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