携帯キャリアは「わが世の春」を謳歌している。最大の要因はスマートフォンの普及だが、それはいつまでも続かない。事業の主導権は徐々にアップルやグーグルに移りつつある。物流に手を広げるドコモ、規模拡大に邁進するソフトバンク。両社に挟まれる「2番手」は、通信サービスの洗練で活路を拓く――。
「iPhone」以外のV字回復の要因とは
13年1月29日、東京・増上寺。歌手のきゃりーぱみゅぱみゅが手元のスマートフォン(スマホ)を操作すると、東京タワーの照明が赤、青、黄と次々と変わる。音楽と照明とスマホを組み合わせた斬新なパフォーマンス。約1500人の歓声が響き、「驚きを、常識に。」という文字が浮かび上がる――。
「FULL CONTROL TOKYO」と題されたこのイベントは、KDDIが催したもので、テレビCMにもなっている。多額の宣伝費を使って、通話やメールではなく、「スマホで世の中をコントロールする」というメッセージを訴求する。それはKDDIの世界観を伝えるものだ。
「スマホブーム」のなかで、携帯電話各社は好調だ。2012年4~12月期決算では、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの3社とも増収となった。ただし営業利益では明暗が分かれた。ドコモは販促費の積み増しなどで7021億円と5.6%の減益、一方、ソフトバンクは8期連続の最高益となる6001億円だった。
これに対し、KDDIは3%の増益となる3955億円。規模に勝るドコモはともかく、契約数では業界3位のソフトバンクに営業利益で劣るのは、KDDIがスマホブームに乗り遅れたツケだ。だがそれは裏を返せば、今後の改善の余地が大きいことを示す。