「日枝体制」が招いたガバナンス低下
そして2.の「上に進言できない企業風土がある」だが、これは、準備もまともにできていないのに「とりあえず」と敢行しようとする上司に意見することができない風潮が社内にあったということだ。私がフジテレビ社員への取材をしたところによると、記者会見の詳細は事前に社内に情報共有されてはいなかった。上層部と一部の広報部員しか詳しい内容は知らされていない。
だが、少なくとも広報部員は知っていたわけだから、読者の皆さんは「『社長、この内容の記者会見だとまずいと思います』と進言すればいいではないか」と思うだろう。
しかし、長年、「日枝体制」下で粛清を強いられてきた社員にそんな反骨精神はない。「傀儡」や「イエスマン」だけを重用して、歯向かうものは切り捨ててきたからだ。「それがフジテレビの企業風土だ」と多くのフジテレビ社員や元社員が私に証言してくれた。
以下は、元フジテレビプロデューサーでJPNEWS通信社代表の中村雅一氏から聞き取った社員たちの声だ。
「まともで優秀な社員は冷遇されて、既に追い出されたり自分から退社していて、忖度上手の無能しか残っていないので、この先もグダグダでデタラメな対応が続くと断言します」
「事件発生はともかく、その後の対応がデタラメなのは、昔からの社風・伝統ですね。大問題が発生すると、とりあえず逃げて2週間ぐらい音信不通になり、隠れて様子を見ながら部下に対応させて、ほとぼりが冷めたころに、何事も無かったような態度で現場に来るって感じの先輩が何人かいました」
あまりにもリアルな話ではないだろうか。
いまはまだ「第1フェーズ」の序章
いまもなお続いているCM放映差し止めや差し替えによって、今後フジテレビに起こる「インパクト」はどれほど巨大なものになるのだろうか。
私は、いまはまだ「第1フェーズ」の序章に過ぎないと見ている。企業側の都合でCMをACジャパンのものに差し替えているだけだからだ。これは、すでにスポンサーが買っていたCM枠を投げ捨てるようなもので、フジテレビに損失はない。
しかし、問題は新たなCM枠が購入されなくなってから生じてくる。いまのままでは、「ナショナルスポンサー」と呼ばれる大企業の新規出稿は当面難しいだろう。そうなればフジテレビは経営的に打撃を受ける。これが「第2フェーズ」である。
最悪の場合、すべてのCMを「投げ売り」に…
そして次に待ち受けているのが、「第3フェーズ」だ。
この「第3フェーズ」は、フジテレビの画面からナショナルスポンサーのCMがすべて消えるという現実だ。CM放映における「負のスパイラル」が始まるのである。CM枠が売れない場合にテレビ局が採る手段は2つしかない。自局の番組の宣伝CMで埋めるか、枠を投げ売りするかだ。