【田原】入国は簡単にできるんですか。観光ビザを取っても、数日間しかいられないでしょう。

【山口】そうなんです。15日間のビザで入国しましたが、それだけじゃよくわからない。単なるバックパッカーじゃダメだと思って、1週間たったころにダッカ大学院に入学させてくださいと頼みにいきました。でも、その翌月に女子寮が爆破されて。

【田原】えっ、爆破?

【山口】はい。国立大学は学生のデモが盛んで、そういう事件が起きるんです。さすがに危ないなと思いまして、私立の一番いいところといわれるBRAC大学院にいって受験させてもらいました。受験は3日後くらいにあって、なんとかもぐりこみました。

【田原】だけど、学費もかかるし、住む場所も必要でしょう。学生でお金ないのに、どうしたの?

【山口】いったん日本に戻って、ドン・キホーテや、焼き肉屋さんなどで必死にアルバイトしました。150万円くらい貯めたかな。日本とバングラデシュでは物価が10倍くらい違うので。

【田原】大学院に行って、何かわかりましたか。

【山口】私は教育に興味があって、学校をつくることがグッドなことだという思いを持ってバングラデシュに行きました。だけどクラスメートたちが悩んでいたのは、仕事がないこと。私から見たら、彼らはベンガル語も英語も話せてとても優秀。だけど実際にバングラデシュの経済は半分以上が農業で成り立っている。勉強してもそれを活かせる仕事がないから、僕を日本に連れてってくれっていう友達がたくさんいました。そうした現状に直面すると、まず働く環境をつくることが先じゃないかと。

【田原】優秀なのに、なんで就職できないのかな。

【山口】彼らが働きたいのは第1が銀行、第2が保険、第3がコンサルです。でも、バングラデシュは65%が農業で、それ以外の大多数は製造業。製造業はボリュームが大きいですが、そこで働いても稼げるお金は少なくて。