2011年3月11日。東北関東大震災によってもたらされた惨状は、日本が、太平洋戦争に敗れて焦土と化した姿に重なる。この未曾有の大災害は、まさに、日本の「第二の敗戦」といっていい。

<strong>ジャーナリスト 田原総一朗</strong>●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京を経て77年よりフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』などテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。『Twitterの神々』など著書も多数。
ジャーナリスト 田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京を経て77年よりフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』などテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。『Twitterの神々』など著書も多数。

太平洋戦争では、軍部も含めて多くの日本人は、わが国の国力と軍事力を信じ、負けるはずはないと思っていた。しかし、アメリカやイギリスなどの連合国に敗れた。

「第二の敗戦」では、自然を相手にして敗れた。過去、大地震や津波の被害にたびたび見舞われてきた東北地方沿岸部では、高さ10メートルの巨大な防潮堤や堤防が築かれていたが、自然はこれをやすやすと乗り越えて町を破壊し、人々を呑み込んだ。

世界一厳しい耐震基準とフェールセーフの設計思想でつくられた原子力発電所の機能をいとも簡単に奪った。そして、放射能汚染という二次災害の不安をもたらしている。

この大震災は、文明を過信し、自然をも制御しようという人間の傲慢さに対する自然からの警告といった捉え方もできるだろう。

想像を絶する自然の猛威に敗れた日本の姿を目の当たりにして、国民は呆然と立ちつくしている。にもかかわらず、政府の対応はお粗末だと批判する声が高まっている。私自身も政府に対して言いたいことは山ほどあるし、批判しようと思えばいくらでもある。しかし、いまはそれをあえて抑えている。

いま大切なことは、政府を批判することではない。「第二の敗戦」というこの国難に、政官財とすべての国民は一致団結して立ち向かわなければならない。被災地の救済と復興を急ぎ、もう一度、自信を取り戻さなければいけないと思っている。政府を批判しているような暇はないのである。