考古学者と呼ばれる人たちは、普段どのような生活をしているのか。『考古学者だけど、発掘ができません。』(ポプラ社)より、駒澤大学の大城道則教授のリアルな日常を紹介する――。(第2回)
私はいったいいつ自分の研究をすればいいのだ
夢を語るのに頭を抱える今ではすっかり夢物語となってしまった感が否めないが、本来、大学教員の仕事とは、教育と研究の二本柱であるとされている。しかしながら、私のように学部の授業だけではなく、大学院の授業を含めて週9コマあるなかで、自分自身の研究に割く時間を作るのは至難の業だ。不可能だ! 神業だ!
それに加え、あらゆる角度から引っ切りなしに飛び込んで来る大学広報の仕事(駒澤大学の知名度を高めるために絶対に必要なので断ることはない)、全国各地の高等学校から依頼される出張模擬授業(受験者数の増加には必要だ。大学も営業が大事なのだ)、さまざまな学内委員会の仕事、学外の学会などの委員の仕事、仕事、仕事、仕事……。
それに付随する会議の数々、数々、数々……。そしてそのために必要な会議資料の作成と読み込み……。会議の数は年間三桁を優に超え、入試や夏休みにはオープンキャンパス、土日には公開講座が待ち構えている。いったいいつ自分の研究をすればいいのだ?
そのうえ、秋から春にかけては入試業務があり、最近は夏休みですら大学に公務・業務で呼び出される。それ以外の雑用も半端ない。次々と届く学内外からの行列ができる考古学者の進路相談室メールへの返信だけでも一日数時間を要してしまう。毎日パソコンを開くのが怖いくらいだ。
それに科研費(科学研究費助成事業。豊かな社会発展の基盤となる独創的・先駆的な研究に対する助成事業)の報告書も書かないといけないし……。
だから毎年、考古学者や歴史学者、要は大学の先生になりたいという夢を持って駒澤大学に入学してくる学生たちに「どの面下げて」夢を語ればいいのかと頭を抱えてしまう。