アメリカの「二重の封じ込め」がもたらしたもの

アメリカも自分たちの戦略がうまくいっていないことを認めています。

2024年5月初旬、アメリカ上院軍事委員会の公聴会で、ヘインズ国家情報長官が、ロシアの国内情勢と国際環境がモスクワに有利であると述べました。

ロシアは中国との戦略的パートナーシップを強化しています。アメリカがロシアを打ち負かし、可能な限り弱体化させ、国際舞台で孤立させ、政治的に不安定にしようとしていることが、ロシアと中国の接近に少なからず寄与しています。

バイデン大統領を筆頭に、アメリカは中国を戦略的に封じ込め、非友好的な同盟や連合で構成される「輪」で囲い込もうとしましたが、これもまたロシアと中国を接近させ、自国の主権と安全保障を確立するために共通の戦略的立場をとる状況を生み出しました。

2024年4月上旬にはラブロフ外相が、5月中旬にはプーチン大統領が大統領再選後初めて北京を訪問しました。中国の王毅外相はラブロフ外相との会談で、両国に対するアメリカの圧力が高まる中で、中ロ関係を「二重の封じ込めに対する二重の対決」と表現しました。

アメリカと中国の国旗
写真=iStock.com/cbarnesphotography
※写真はイメージです

「中国からの軍事支援」はあったのか

【東郷】ロシアと中国は対西側戦略で歩調を合わせていますが、すべての政策が一致しているわけではありませんね。

【パノフ】ロシアと中国は、どうすれば公正な世界がつくられるかに関して共通のビジョンを持っています。その一方で、それぞれ自国の能力と戦略的状況に応じて、どのような道を進むべきかについて独自の考えを持っています。パートナーの立場を全面的に受け入れる必要はありません。

たとえば、中国はロシアのクリミア併合を公式には認めておらず、国家の領土保全の原則を支持しています。彼らは中国国内の政治状況に配慮しており、チベットや新疆ウイグル自治区における分離主義的感情に懸念を持っているのです。

また、中国はロシアの特別軍事作戦を軍事支援していません。しかし、アメリカやヨーロッパでは、ロシアがウクライナで軍事的に成功しているのは中国の支援のおかげだという見方が広まっています。中国企業や金融機関は西側諸国の対ロ制裁を回避してロシアに協力していると非難され、制裁を受けています。

米軍統合参謀本部議長のチャールズ・ブラウン大将は2024年4月17日、米下院の公聴会で、ウクライナ紛争に関して中国がロシアにいかなる軍事援助もしていないことを認めました。彼は「中国はロシアの侵略行為を非難していないだけだ」と述べています。