輸入品は国産品に成り代わった
これまで輸入していたものをロシア企業の製品に置き換えることも進んでいます。
ロシア市場から撤退する外国人オーナーが所有していた企業の買い取りも行われました。これにより、新たな生産体制を整えるだけでなく、雇用を維持することが可能になりました。実際、失業率は低水準にとどまっています。
アメリカや欧州諸国がウクライナ軍に必要な量の武器や砲弾を供給する能力をすぐに使い果たしてしまったのに対し、ロシアの防衛産業は近代的な兵器や必要な量の弾薬の生産を加速させています。西側の分析家及び専門家は、ロシアの軍産複合体がこれほど大きな成果をあげるとは予想していませんでした。
全体として見ると、ロシアの指導部は市場メカニズムを巧みに利用し、規制を効果的に用いることで持続可能な経済成長を維持しています。
国際通貨基金(IMF)は年次報告書で今後2年間の経済を予想し、ロシアの経済成長率は2024年は3.2%、2025年は1.8%としています。
そのため、西側の政治家や経済人、専門家の間でも、対ロ制裁は効果がないという認識が広がっています。
日本国際問題研究所の「戦略年次報告書2023」は、制裁の目的はロシア経済に打撃を与え、プーチン政権の政策を変えることだったが、制裁は期待された効果をあげていないと結論づけています。
もっとも、このような結論にもかかわらず、報告書は制裁を継続すべきと示唆しているのですが。
「プーチン大統領の再選」がすべてを物語っている
【東郷】なぜ西側は対ロ制裁が十分な効果をあげないことを予測できなかったのでしょうか。
【パノフ】それはロシアの軍事力や経済資源、ロシア社会のムードについて無知なため、誤った評価をしてしまったからです。
西側の見立てでは、制裁によってロシア国民の生活水準は著しく低下し、指導部に対する不満が高まり、特別軍事作戦を停止せざるを得なくなるとされていました。
しかし、そのようなことはまったく起きず、ロシア社会は分裂していません。それどころか、特別軍事作戦を実施したロシア指導部の行動を全面的に支持しています。
その最たるものが、今年3月15日から17日にかけて行われたロシア大統領選挙の結果でしょう。ここで現職のプーチン大統領が文句なしに勝利を収めました。
もちろん、指導部の行動を認めない人がいることは否定しません。しかし、その数はごくわずかです。しかも、彼らはロシア社会の圧倒的大多数から強く拒絶され、批判されています。