孤軍奮闘

40歳になった胡麻さんは、20年勤務してきた製薬会社で係長になっていた。

仕事に家庭にと、ますます多忙な生活を送っていた胡麻さんは、健康診断で便潜血の指摘を3年間無視し続けた結果、2月に大量の下血に見舞われ、ようやく病院を受診する。

即刻検査入院することになったが、直腸・大腸・小腸にポリープが13カ所点在していることが判明し、全て内視鏡術で摘出した後、内視鏡では摘出できなかった部分を開腹術で切除。約1カ月入院した。

ポリープ切除のイメージ画像
写真=iStock.com/SciePro
※写真はイメージです

「会社側の大きなプロジェクトに関わっていた途中で急に休職し、私が休んでいる間に運営が行き詰まったようで、復職した時は周囲の視線が冷たく、上長は不機嫌でした」

4月中頃に胡麻さんが復帰すると、プロジェクトチームを外され、4月下旬には異動になった。

「この時、中学生になった長女の反抗期が始まっていました。当時は職場の異動で仕事に慣れず、子育てにも悩んでいたため、夫に仕事や長女の相談をしたら、『仕事を家庭に持ち込むな! 俺も忙しい。反抗期なんだからほおっておけ』と叱られました。後から考えると夫も課長になり、一番忙しい時期でしたし、異動は会社側の配慮だったと気づきました」

同年7月。会社の朝礼で意識を失って倒れた胡麻さんは、救急搬送先でうつ病と診断された。

「4月から平均睡眠時間は1日3時間。眠っても中途覚醒を繰り返していました。10キロほど体重が落ちたのは、ポリープを取った後に食欲が落ちたせいだと思い込んでいました」

病院から「すぐに休職を要する」と会社へ通達。精神科医から「職場にも家にも課長がいて、気が休まらなかったね」とかけられた一言に、胡麻さんは涙が止まらなかった。