子連れ母の財布:表参道ヒルズを賑わすベビーカーマダムたち
オープンから7年余りがすぎた「表参道ヒルズ」。ファッションの中心地という好立地も手伝って、30~40代の女性たちで賑わっている。そのなかで目を引くのが、ベビーカーを押す子連れの母親の姿だ。森ビル営業本部の穐山壮志館長は、そのことに開館2年目から気づき始めた。
「本格的なトレンドになるという手応えがあり、09年の春に『キッズの森』を開設した。彼女たちのニーズに応えるべく、空間の一部に明るく広々とした授乳施設や遊び場を置き、子供向けブランドのテナントを誘致した」
キッズの森のリアルターゲットはまさしく“ベビーカーマダム”だ。考えられる集客エリアとしては、施設のある東京都渋谷区を含めた港、千代田、中央、目黒、品川の6区。面白いことに、この6つの区の子供の数が増えているのだ。団塊ジュニア世代が結婚して、この地域に住まいを購入し、子供が誕生しているからである。
場所柄、女性利用者は30~44歳の年齢層が多く、男性客を含めた全体の3分の1に達する。しかも、彼らはほぼ例外なく富裕層に属する。実際、そうした母子連れは外車で来て、買い物や食事を楽しむ。「来店頻度は月に1、2回といったところ。自分のファッションと同じように子供服にもこだわりを持ち、自分たちと同じ10万円前後のものでも購入していく」(穐山氏)。
子連れ母の財布の紐は緩いうえに、買い上げのリピート率も高く、会員カードのデータからの推計では年間約8回という結果が出ている。将来にわたって有望な顧客層であり、穐山氏は近隣の子供向け商業施設ともタイアップしたイベントの開催も決めている。