手なずけに気づくヒント
おどしにしても贈り物にしても、加害者が引き出したいのは、対象からのレスポンス(反応)です。加害者は、レスポンスを引き出し、それを糸口にして、次の関係性に持ちこみたいともくろんでいるのです。ですから、それに気づくということが大切になります。
ただし、気づくのがなかなか難しい場合もあるでしょう。子どもが習い事をしているなどの場合、その連絡事項にSNSが利用されているのであれば、保護者もふくめたグループでやりとりができるプラットフォームを使うようにするといいのではないでしょうか。複数人が確認できるという状態をつくることが被害を防ぎます。
「家の人はわかってくれてないんじゃない?」
子ども:私はB高校に行きたいのに、親はC高校にしろって怒るんだ
加害者:自分なりの理由があるのにね
子ども:でも、親なりに将来を考えてくれてるのかもしれない
加害者:どうかな。家の人はわかってくれてないんじゃない?
加害者は子どもを周囲から切り離そうとする
「性暴力」といってもさまざまな種類があります。
電車内でのちかんなど、明らかに性暴力とわかるものもありますし、路上で物を引ったくられるという被害のすきに性的部位を触られるというような、別の犯罪のかげに隠れている性被害もあります。
性暴力と聞くと、いやなことですが、加害者が暴行を加えるとか、脅迫したりする、といったことが想像しやすいかもしれません。たしかにこれまでは、そうした暴行や脅迫による性暴力に焦点が当たることが多かったと思います。でも、性的グルーミングはそうではありません。もちろん、その経過の中でおどしなどを用いるということはありますが、むしろ、対象との間に愛情や信頼に基づく関係性を築いていく、というところにその核心があります。
こうした関係性の構築は、性的グルーミングのプロセスの中でも最初のほうに行われます。そして、おおよそ対象との関係性ができてくると、対象を周囲から切り離していく手口が認められるのです。ここで言う「周囲から」というのは、よりくわしく説明すると、周囲との「関係性から」、と「物理的な状況から」、という2つの意味をふくんでいます。