「相手の言うことがすべて」になる
周囲から切り離されると、第三者による情報が入ってきにくくなります。困っていたり、自分に自信がなかったりするような精神状態のとき、第三者の冷静な意見が助けになることがありますよね。でも、閉ざされた世界の中では、その世界にいる相手の言うことがすべてになってしまいます。
その結果、相手への依存が高まります。特に、信頼関係が築かれてしまった後では、言っていることがどこかおかしいとか、うそなのではないかと感じても、客観的な情報が入ってこないので、信じている人の言うことなのだから正しいはず、と考えてしまうのです。
このような周囲からの切り離しがどれだけ重大か、ということをみなさんにも少し想像してほしいので、いじめを例に出したいと思います。
みなさんも小・中・高校、あるいは社会人生活もふくめて、これまでにいじめられた経験、いじめを目撃した経験、もしくはいじめた経験の、いずれかがあるという人がほとんどではないでしょうか。
いじめの基本は、いじめの対象者を集団から分断させることです。分断すれば、対象者には周りから情報が入ってきません。
それによって孤独や不安を感じるからこそ、対象者は分断されたことへのショック感情が高まります。
そんな状態のときに優しくしてくれる人には、気持ちが向きやすくなります。集団から分断するというのは、人をコントロールするのにとても効果的な方法なのです。
関係性からの切り離し
ここでは、周囲の「関係性」からの切り離しについて、まずは取り上げます。
加害者は、対象の心の弱みをよく見ていて、その弱みにつけこんできます。特に、友人や交際相手、あるいは家族との関係がうまくいっていないといった人間関係の悩みの場合、それを利用して、うまくいっていない相手の悪口を言うことがあります。その人たちを悪者にして、自分に依存させようとするのです。
また、作り話などで対象を不安にさせる、ということもします。このシーンでもそうですよね。女の子は、親のことを否定しているわけではないのに、男性は親を悪者にすべく誘導しているのです。「○○のことは信じないほうがいい」とか、「○○と連絡をとる必要はない」などと言って、だんだんと周囲との関係性を切っていくように仕向けるのです。
でも、身近にいる人の気持ちや考えていることなんて、あなたにだってよくわからないことがあるのに、まったくの他人に本当のところがわかるでしょうか。むしろ、それに比べたらあなたのほうが知っているのではないでしょうか。
それに、人間関係なんて、たとえぶつかっても、すべてわかり合えなくてもいいと思うのです。したいことに反対されたからって、家族と連絡を絶つ必要なんてありませんよね。
あなたと家族の間で起きていることについてどう考えるかは、あなた自身の感覚を大切にしてほしいと思います。