1次情報ではなく、受け手側に「価値」を付与しつつ情報配信できる教祖のごとき存在が、今、注目の「キュレーター」だ。各分野の第一線を走る識者たちは、普段、誰の情報を頼りにしているのか。一挙公開する。
複雑怪奇な情勢を「複眼的」に見る
「ニューズウィーク日本版」は、国際感覚の強いビジネスマンに、日本のメディアとは違った視点で「世界の真実を読み解くこと」をコンセプトにしている。
私は編集長時代、テレビのニュース番組や新聞を毎日チェックしていた。しかし、これらの情報だけで国際情勢を正確に読み解くのは難しい。むしろ「テレビや新聞の情報はまず疑え」というところから雑誌企画の第一歩が始まるといってよい。
日本のテレビや新聞の報道には強いバイアスがかかっていることがある。日米関係、日中関係に顕著だが、発信する側が勝手に意味を付加してしまう。昨今の例で言えば、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題。政治的要素が日増しに強くなり、冷静な報道が少なかった。中国を叩いたほうが読者の受けがよいという理由や、「ここで毅然とした態度に出なければ日本のためにならない」、など発信する側が結論ありきで述べることも多く、距離を置いて判断する必要がある。
また、国内、社会、経済など他のニュースと比べると、国際情勢を報道するスペースや時間が非常に少なく、散発的で断片的なものにならざるをえない。特にテレビでは、センセーショナルな映像や、速報性が優先され、瑣末なことしか報道されないことがある。
例えば11年6月にペルーで大統領選の決選投票があり、フジモリ元大統領の長女であるケイコ・フジモリ氏が立候補した。彼女が落選確実になったとき、多くのマスコミが「2人目の日系大統領ならず」と報じた。
実際には、大統領選の結果から見えてくる日本への影響はもっと深刻なものだ。当選したオジャンタ・ウマラ氏は左派の元軍人で、彼が当選したことにより、ペルーが反米でポピュリズム的な社会主義を標榜する国になり、対日関係が大きく変化する可能性がある。ペルーの大統領選を日系大統領が誕生するかという点にだけ注目してしまうと、肝心なことがわからないままだ。このように、「ニューズウィーク日本版」では、日本の報道とは違う見方を心がけて、記事としてつくりあげる。
現在の報道が抱えるこれらの問題を補完し、国際情勢をより「複眼的」に見る手助けをしてくれる識者をご紹介する。ここにあげた4氏は、海外からの情報を垂れ流したり、鵜呑みにしたりすることがない。「ユダヤ人が世界のすべてを動かす」といったいわゆる「陰謀論」にも与しない。自分自身で現地へ足繁く通い、その結果得た情報から、既存の情報を徹底的に検証したうえで、発信している。網羅的で、バイアスの少ない情報と接することができる。テレビや新聞、ネットにあふれる情報を、視点を変えて自分なりに読み解くことにも役立つはずだ。