責任を押し付けられている卸売業者

しかし、農林水産省は「コメ不足が解消され、価格が落ち着く」という立場を変えていない。

25日の記者会見で江藤農林水産大臣は、「正直なところ、新米が出てくれば、市場が落ち着くという見通しを農水省として持っていましたが、今年に入っても、高い状況が続くのではないかという予測がある。そして、メディアの中でも、卸の方々が、先高を見込んで、在庫を抱えているのではないかという報道も最近は目立つようになりました」とこの期に及んでも、卸売業者が悪いと主張しているのだ。

食糧法第3条第2項は、「この法律において「米穀の備蓄」とは、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することをいう」と規定している。

農林水産省は24年夏の事態は「米穀の生産量の減少」によるものではないから、備蓄米を放出することは食糧法に違反すると説明していた。今回の放出について、「コメの流通不足を理由とした備蓄米の利用は初めてで、こうした方法が可能かどうかを来週31日に開く(食料・農業・農村政策審議会の)食糧部会で議論する予定である」と説明している(TBS CROSS DIG)。現在の状況は、生産量の減少ではなく卸売業者がコメを抱え込んでいることによる流通量の減少だと言っているようだ。しかし、そうなら食糧部会で了承されたとしても法律違反である。

支離滅裂な農水大臣の説明

25日の記者会見で農林水産大臣は、次のように述べている。

「私は国会の答弁の中で、(中略)食糧法3条の第2項には、備蓄米は、生産量が大幅に減ったときに出すものと明確に書いてあるので出せませんと答弁をさせていただきました。49条には、貸付という条項がありますが、これは、海外の他の国に対して貸し付けるということで、これを国内に適用することは、適切ではないということでした。29条には、売り渡しという条項がありますが、これもこのままの状態ではいかがなものかということで、省内で検討してまいりました。(中略)法改正が必要なのか、法改正を経なくても備蓄米の活用が可能か、協議してきたわけですが、貸し付けるということであれば、法改正を行わなくてもいけるだろうと。必ず返していただくということです。(中略)1月31日(金曜日)に食糧部会がありますので、ここに諮らせていただいて、政府備蓄米の買い戻しの条件付きの販売を可能とすることを、議論いただきたいと思います」

支離滅裂である。

まず、食糧法第3条第2項は「米穀の生産量の減少」と規定しているだけで「大幅に減った」とは書いていない。発言の前段で同法では「貸し付け」をできないと言った後に販売ではなく「貸し付け」ならできると言っている。さらに、最後になると、「貸し付け」ではなく「買い戻しの条件付きの販売」を行うとしている。「貸し付け」と「販売」は違う。この記者会見を理解できる法律家はいないだろう。

記者会見で発言する男性
写真=iStock.com/Semen Salivanchuk
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