「相続した家」が不動産市場を席巻する?
首都圏の持ち家率はおおむね55%(関東大都市圏)ですから、今後15年間で370万~413万件の自宅が相続対象物件となります。年平均で25万~28万件です。このうち、どのくらいの割合で不動産マーケットに登場するかはわかりませんが、かなりのインパクトをおよぼすことは間違いありません。
なぜなら、現在の首都圏における新築マンション供給戸数はわずか2万7000戸弱、中古マンション成約件数は3万6000戸弱、中古戸建て住宅成約件数は1万3000戸弱、合計約7万6000戸にすぎません。相続対象物件の3割がマーケットに新たに登場してくるだけで8万戸。その供給圧力の大きさが想像できます。
この計算はあくまでも年平均にすぎません。現実的には年が進むにしたがって、供給量が増えていくものと考えられます。
東京23区の中で最初に動きがあるのは…
すでに首都圏では東京都を除く3県では人口の減少が始まっています。東京都ですら都全体人口は2025年、都区部に限っても2030年が人口のピークとされています。
世帯数こそ増加を続けてきていますが、今後は若年人口の減少、高齢者単独世帯の死亡等による減少など人口増だけでなく世帯数増を保っていくことにも限界があります。2030年を軸に前後3~5年にこの大量相続問題が世間を賑わせるようになるはずです。
地域的には、まず都区内の住宅地がスタートです。世田谷区、目黒区、文京区、杉並区、大田区、練馬区などの戸建て住宅がポロポロと売りまたは賃貸に出てきます。
戦後まもなくに東京に出てきた人たちが最初に家を構えたのがこの近辺です。戦前・戦中世代の所有者が多いエリアです。この人たちはすでに80代半ばから90代。ここ5年から10年でほぼ確実に相続が発生していきます。
このエリアは比較的富裕層が多いので、相続人がそのまま所有を続けるケースも考えられますが、相続税の納税用に売却する、賃貸マンション、賃貸戸建てとしてリニューアルを施して運用するなどの事例が多発しそうです。