時代の空気にあった斬新なビジネスはツタジュウに通じる
翌年、増田氏は「カルチュアインフラを創り続けること」という理念を社名に込め、カルチュア・コンビニエンス・クラブを創業しました。増田氏の目的は、本屋やレンタルショップを作ることではなく、「世界一の企画会社を作る」ということでした。店はあくまで「企画作品」と位置づけられていました。増田氏が最初に作った企画作品である「蔦屋書店」は顧客から圧倒的な支持を受け、その企画を規格化した「TSUTAYA」は全国の多くの会社がフランチャイズとして参加する形で急速に広がりました。
その後もCCCは、時代の空気にあった斬新な作品を次々に発表していきます。まるで蔦重が喜多川歌麿(染谷将太)、山東京伝(古川雄大)、東洲斎写楽らと組んで、時代の空気にあった多様な斬新な作品を発表していくように。
1994年、「ないビデオはない」をコンセプトに掲げた都市型大型店「TSUTAYA恵比寿ガーデンプレイス店」をオープン。深夜遅くまで多くの客で賑わいました。1999年、渋谷ハチ公交差点の正面に、商品位置検索システム、音楽ダウンロード端末などの新サービスを取り入れた「SHIBUYA TSUTAYA」を開業。
増田氏は代官山に、ツタジュウは日本橋に店を出した
2003年、六本木ヒルズ内にスターバックスと一体化したBOOK & CAFE業態の「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」を提案。2007年からはTポイントサービス(現Vポイント)を開始。2011年には「代官山蔦屋書店」を中核とした「代官山 T-SITE」を開業し、大きな話題となりました。さらに2013年、佐賀県武雄市で蔦屋書店やカフェを併設した図書館の運営に参画。2015年、東京・二子玉川に「蔦屋家電」をオープン。近年では複数の出版社などを傘下に収め、出版・映像・音楽などのコンテンツ企画・制作をはじめ、さまざまな事業を展開する企業グループへと発展しています。
中でも2011年の代官山蔦屋書店のオープンは、最大のチャレンジでした。高級住宅地である代官山に広大な敷地と莫大な費用を投じて、新業態の書店をオープンする計画に業界関係者の誰もが懐疑的でした。増田氏が出店計画を役員会議に提出した際、全員が反対したといいます。それでも増田氏は信念を貫き通し、「株主に説明できない」という理由で上場を廃止してまで、このオープンにこぎつけました。