学習習慣をつけるご褒美のあげ方は?

一度きり勉強に向かうのではなく、わが子には勉強「習慣」を身につけてほしいと親は思うものでしょう。お金によるご褒美が、良い習慣を形成することにつながることを示した研究もあります。

健康やダイエットのためにスポーツジムに通い始めたけれど続かなかったという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。カリフォルニア大学サンタバーバラ校のゲーリー・チャーネス教授らは、大学生を対象に実験を行いました。

それによると、最初の1週間の間に1回以上スポーツジムに行けば25ドルが支払われ、続けて次の4週間で合計8回以上ジムに行けば追加で100ドルが支払われたグループは、実験直後もジムに行く回数が多く、さらに実験終了後、お金がもらえなくなった13週後にもジムに通い続けていたのです。

一方、最初の1週間だけにお金を支払われたグループと、お金を支払われなかったグループは、ジムに通う頻度は実験前と変わりませんでした。つまり習慣化のためには、①始めるときの抵抗感を和らげ、②ある程度の期間繰り返すことが必要だとわかります。その二つの壁を、ご褒美により越えさせてやれば習慣化につながるということです。

『プレジデントFamily2025冬号』(プレジデント社)
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これは、子供が勉強習慣をつけるためでも同様に考えることができるでしょう。まずは最初の一歩を踏み出すための手助けとしてご褒美をあげる。そして1回だけではなく継続的にご褒美をあげ続けることで、習慣とするところまで見守ることが必要です。

注意すべきは、この実験では、もともとジムに通う習慣があった人は、お金を支払われたことでかえってジムに行く回数が減ってしまったことです。お金を報酬としたことで、もともとその人が持っていたスポーツへの関心や健康への意識が低減してしまったと考えられます。

このことから、お金をご褒美にして習慣形成につなげるには、まだ勉強習慣が身についていない子を対象にするといいことがわかります。もし、自分で学習計画を立てているような子供をお金で釣ろうとしてしまったら、本来の勉強への好奇心や興味を失わせてしまう結果になってしまうかもしれません。

(構成=本誌編集部)
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