今の若手社員は気を遣う経験が乏しい
相手の気遣いや配慮に気づける人は、自分自身が「気を遣う経験」を積んできた人であることが多いのも事実です。なぜなら、気遣いをした経験がある人ほど、その行動の裏にある努力や難しさも知っているからです。
人にご馳走するのも、仕事が円滑に進むようにチームメンバーに裏でこまめに声をかけるのも、簡単なことではありません。自分も同じような経験がある人ほど、相手の行動を当然と思わず、「ありがたい」と素直に受け止められます。
相手の気遣いを知るためには、自分自身が「気を遣う側」になってみることが最も効果的です。
今、多くの職場で問題となっているのが上司と部下の逆転現象です。パワハラなどの問題や、人材不足の懸念から上司が部下に対して気を遣い、ご機嫌を伺うばかりになる「逆転現象」が見られることがあります。また、リモートワークが増え、顧客と直接対面する機会も少なくなっています。
若い世代の方々にとって、目上の人にいちいち気を遣わなくていい環境は、確かにラクかもしれません。しかし、人に気を遣うという経験をしないまま、逆に気を遣われるばかりで年月を重ねれば、「やってもらって当たり前」という感覚はどんどん大きくなっていきます。
人間関係が一気に崩壊するのが50代前後
そうした環境に長く浸かっていると、人との関わりの中で、感謝を示すことの大切さや、感謝心の意味にも気づかず年齢だけを重ねていくことになります。今の若い世代がラクに慣れたまま40代、50代と年齢を重ねていくことを私はとても危惧しています。
正直、20代や30代のころであれば「若気の至り」で許されることもたくさんあります。自分勝手な振る舞いで失敗しても、それはそれで大切な人生の経験です。しかし、きちんと叱ってくれる上司や先輩に出会わないまま、他人のサポートや気遣いの存在に気づかず、当たり前のものとして受け取ってきた人は、自意識がどんどん肥大していきます。
「俺はすごい」「これは私の手柄だ」と成果や成功を独り占めして、謙虚さを忘れてしまった人は、その後どうなると思いますか?
答えは簡単。周囲の人がどんどん離れていくのです。
謙虚に周囲に感謝しながら過ごしてきた人が何十年とかけてコツコツと周囲の人との信頼関係を築いてきた一方で、感謝を忘れた人々は少しずつ少しずつ人間関係にヒビを入れ続けています。それが一気に崩壊するのが50代前後です。