分数は計算途中の記号にすぎない
【西成先生】分数は割り算をコンパクトに表現した記号にすぎませんから、分数って数ですらないんです。
【郷さん】いやいや、分「数」っていうじゃないですか。
【西成先生】分数は計算途中を表したものなので、実際に割り算をしないと実際の値がわかりません。たとえば1/2は「1÷2」と同じこと。「1÷2」を計算すると0.5です。0.5は数ですが、1/2はまだ数ではありません。
【郷さん】数じゃないなら……、なんでわざわざ分数を使うんですかね。
【西成先生】複雑な式を計算するときに分数を使ったほうが便利なことが多いからです。昔の人たちのおかげで、分数のまま四則演算して、分数のまま答えをだすことができるようになりました。
【郷さん】答えが分数なのはいいんですか? せめて小数などの数に直したほうがいいのでは?
【西成先生】たしかにそこは「最後まで計算しろよ」って感じるかもしれませんけど、数学的には答えが分数の状態でOK。たとえば設計図に1/2mと書いてあっても問題ありません。でも、それを実際に大工さんが見て角材を切るときは「0.5mだな」と計算して作業するわけです。そのような感じで、算数の答えとしては1/2のままでもいいけれど、現実世界にそれを反映させるときは0.5という数にして使う。そういう数学界の決まりがあります。
【郷さん】なるほど。
割り切れないときには分数が超便利
【西成先生】あと、割り算って割り切れない場合がありますよね。たとえば「りんご1個を3人で分けたらひとり何個か」というときに、「1÷3」を電卓で計算すると0.3333……と永遠と「3」が続きます。これを「循環小数」といいますけどね。このように表現したりします(図表3)。
【西成先生】一応スッキリ書けますが、このままで計算するのはどうも難しそう。でも分数を使えばたとえば、「3/11×1/3」って計算できるんです。便利でしょ?
【郷さん】じゃあ割り算のときにやった「商がいくつで、余りがいくつ」みたいな話は……。
【西成先生】そこも分数にすれば「余り」は一切意識せず、かちゃかちゃ計算できるんです。
【郷さん】余りをだすのにあんなに苦労したのに……。分数って便利ですね。