調達資金291億円を先端技術へ投資 

12月18日、キオクシアホールディングス株式会社(キオクシア、旧東芝メモリ)は、東京証券取引所プライム市場へ新規上場(IPO)を果たした。これによって調達した資金(291億円)は、データセンター向けメモリーの開発や増産などに投じる方針という。キオクシアのIPOは、同社の株主である東芝の再建にも大きな影響を与える可能性もある。

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今後、キオクシアが、データセンター向けの高精度のメモリーで世界シェアを高めることができれば、同社をめぐる利害関係者との関係は改善するだろう。ただ、AI向けのメモリーユニットに関しては、DRAMを積み重ねた広帯域幅メモリー(HBM)の需要が大きく増加すると予想される。

「東芝の経営危機」に揺れた10年

これまで、キオクシアはフラッシュ・メモリーを得意としており、HBMに本格的に進出するには相応の時間と費用がかかるとみられる。今後、同社の経営陣が、いかにして新事業を進めるか、そのタイミングと手法は同社の命運を握ることにもなる。それと同時に、東芝の経営再建にも無視できない影響を与えることになるはずだ。

今後の展開次第では、AI向けメモリー分野で独走状態の韓国SKハイニックスがキオクシア株を取得し、外国資本のパワーによってわが国の半導体業界の再編が起きる可能性もあるかもしれない。

元々、キオクシア、は東芝のメモリー事業(東芝メモリ)としてメモリー半導体の設計開発や生産を行っていた。現在、同社はNAND型フラッシュメモリー市場全体で、韓国のサムスン電子(35%程度)、SKハイニックス(20%程度)に次ぎ世界第3位(15%程度)のシェアを持っている。

過去約10年間、キオクシアを取り巻く事業環境は劇的に変化した。最も大きな影響は東芝の経営危機だ。2015年4月、東芝でノートパソコンの販売額水増しなど不正会計が発覚した。決算内容修正で赤字に転落した東芝は、上場維持という体裁にこだわったこともあり改革が遅れた。