ロサンゼルス在住若手ジャーナリストで陰謀論の専門家でもあるマイク・ロスチャイルド氏のインタビュー第2弾――。同氏は、『陰謀論はなぜ生まれるのか Qアノンとソーシャルメディア』(烏谷昌幸・昇亜美子/訳、慶應義塾大学出版会)の著者でもある。米大統領選直前に配信した前編に続き、後編では、人が陰謀論という罠にはまる背景や、トランプ氏の支持者が多い地方のコミュニティーで陰謀論が広まりやすい理由、イーロン・マスク氏のツイッター買収と陰謀論の関係といった問題に加え、大統領選後の追加取材を盛り込み、リポートする。
(前編から続く)
マスク氏の資金力とXを利用して、トランプ氏は勝利した
――どのような陰謀論がトランプ氏の追い風になったと思いますか。陰謀論は、ハリス氏よりトランプ氏に有利に働いたといわれます。
特定の陰謀論がトランプ氏を勝利に導いたかどうかはわからない。とはいえ、彼が「不法移民やインフレ、進歩主義的な政治を解決できるのは自分だけだ」と訴えるべく、アメリカ人の被害妄想と恐怖心を利用したのは確かだ。トランプ氏は実に多くの陰謀論を広めてきた。どの陰謀論が彼の勝利を後押ししたのか特定するのは難しい。
――イーロン・マスク氏は、世界有数のSNSである「X」の経営者として、大統領選にどのような影響を及ぼしたと思いますか。同氏は、第2次トランプ政権のキーパーソンとみられています。
マスク氏が資金力とXの影響力を駆使し、トランプ勝利に影響を与えたことには疑いの余地がない。とはいえ、具体的にどれだけ多くの人々(の投票行動)に影響を及ぼしたのか、また実のところ、新政権でどのような役割を果たすのかを現時点で正確につかむのは難しい。トランプ氏とマスク氏のエゴの大きさを考えると、「共同大統領」というマスク氏の役割をめぐり、2人が衝突したとしても不思議ではない。