日本にはまだ基準がない

私たちが血液調査をする際もこの「20ng/ml」を一つのラインに設定することが多く、それを超すと注意が必要と判断します。

ちなみに、私が協力した多摩地区の住民が行った血液検査では、この濃度を超す住民が多くいました。

多摩地区30市町村791人の血液検査の結果
社会医療法人社団・健生会PFAS専門委員会「PFASガイドブック」より

日本ではいまだ、こうした指針値は示されていません。日本においても疫学調査に基づいたリスクの評価を行い、望ましい血中濃度の上限を示すべきだと、私は考えます。

血中濃度が高い性別と年齢がある

PFASの血中濃度を20歳から50歳くらいの男女で比較してみると、男性のほうが高い傾向があります。

女性の場合、月経で血液が体内から排出されることで定期的にPFASが減っているのではないかと思われます。高齢者では男女差があまりないので、閉経後は同じ状況になるのでしょう。

05年に、京都市に10年以上住んでいる人たちを対象にした調査を行いました。それによると、PFOAとPFOSの血中濃度は月経のある女性よりも閉経した女性のほうが高くなりました。

男性ではこうした年齢での変化はなく、女性は60歳くらいになると男性と同じ濃度となっていました。

実は男女別でPFASの健康影響の現れ方に違いがあるのかという視点の研究はあまりされていません。ただ、女性の月経がある期間は長いので、研究が進めば病気へのリスクに男女の差があることがわかるかもしれません。