献血の効用は社会貢献にとどまらない
こうしたことを踏まえると、血を出すことが血中濃度を下げることにつながる、つまり、献血も同じ効果があると私は考えています。
「PFAS濃度が高い血液を輸血しても大丈夫なのか」と思われるでしょうが、PFASが含まれる血液が輸血されてもその後、PFASを摂取しないように気をつければ徐々に減っていきます。そうであるなら、急を要す、命にも関わる治療である輸血を優先すべきでしょう。
オーストラリアの消防士285人を対象にした調査では、献血を頻繁に行った人とそうでもない人を比較しました。
すると、調査のはじめに9.5ng/mlだった人たちは献血(特に成分献血)を行ったことで1年後に6.5ng/mlになり、3ng低くなりました。
そもそも今、献血をする人が少なくなっていると言われているので、できる人は積極的に献血をすれば、PFASを体外へ出すとともに輸血を通じた社会貢献ができるのです。
個人向け検査体制は不十分
こうなると、自分の血中濃度がどのくらいなのか気になるところです。
日本では現在、PFASに対する血液検査を行う検査会社はいくつかあり、研究用で提供しているほか、医療機関や企業、NPOといった団体から依頼を受けて対応していますが、個人の血液検査は残念ながら、ほとんど受けつけていません。
こうしたことの対応が早いのが米国です。
個人向けの血液検査がすでに活発に行われています。州などによっては汚染があった地域への血液検査の提供も行われています。PFAS対策を進める中で血液検査も選択肢として認識されているのです。
世界的なバイオ分析企業であるユーロフィンでは、16種類のPFASの血中濃度が測定できるサービスを提供しはじめました。糖尿病の血糖の検査キットと同じで、採血器具の先端についている針で指先を少しだけ刺して血液を採取し、検査機関に送ると、90日以内に検査結果が出る仕組みです。ユーロフィンの日本法人でも研究用に検査受託サービスを行っています。