借金の理由は「学費」と答えた

身長は150センチほど。近ごろの女の子としてはかなり小柄な部類に入るだろう。髪型は肩までのストレート。黒髪である。

ファストファッションと思われるシンプルな白シャツに、茶のチノパン。化粧っ気はほとんどなく、眉毛を描いているのみである。もちろんマニュキュアの類いはつけていない。垢抜けない地方の真面目な高校生だといっても誰も疑わないだろう。

記者は怖がらせないようにゆっくりと、穏やかに質問することにした。

「台湾とシンガポールにいたそうですが、これらの国にいた理由はなんですか?」

ツムギはためらうような表情を見せ、小さな声でこう答えた。

「……借金です」
「ホスト、とかではないですよね?」

口にしたあと、ずいぶんとぶしつけな質問をしたものだと後悔したが、ツムギはまったく表情を変えなかった。

「いや、学費です」

ガクヒ? 瞬時に「学費」を認識できなかったのは、これまでの取材では一度も「学費のために海外に渡り売春をした」という話を聞かなかったからかもしれない。

両親が離婚し、母と妹の3人暮らし

ツムギが記者に語った半生をここに記したい。

北関東の中核市で生まれたツムギは母親と4歳年下の妹との3人家族。父親は小学校に入る前に家を出ていったという。両親の間に何があったのかは定かでないというが、離婚した後も母親は父親のことを口汚く罵っていたので「それなりのことがあったのでは」と淡々と語っている。

ツムギは父親が嫌いではなかった。2カ月に一回程度、父親と遊びにいくことを許されていたのだ。公園や遊園地で思いきり遊び、帰りにファミレスで好きなものを食べさせてもらった。幼いながらに至福の時だと思っていた。次に会える日を毎晩、布団の中で指折り数えていた。

しかし数年後、その至福の時は突如奪われる。介護施設で働き始めていた母親はツムギと妹が父親のもとから帰った日には、姉妹を冷たくあしらうようになったのだ。それは回を重ねるごとにあからさまになっていった。

ある日、ツムギは妹と話し合いをした。「もう父親に会うのはやめよう」と。