自らの意思で出稼ぎに来たわけではない
見ず知らずの男とはカラダを重ね、自らの裸の動画まで撮らせる。それでも唇は奪われたくない。ナオが守ろうとしているものは何なのか、理解が追いつかないが、なにか確信めいたものがあった。
「ひょっとしてホスト?」
「え、なんでわかったん?」
「ホストが女を海外に送るという話をなにかで読んだから……」
「……」
一瞬にして不穏な空気に覆われた。彼女はこれまで見たことのない悲しそうな表情を浮かべた。
「私は違うよ! 来たかったから来ただけ」
否定はするが、自らの意思で韓国に来たわけでないことは明らかだった。
かりそめの愛をカネで買ったとしても、自分の愛する男から海外で売春することを強いられた。そしてやってきた先が、これも愛を注いだアイドル、ジョングクがいる韓国だった。皮肉な巡り合わせである。
「もういいから……今日は話をしようよ」
重くなった空気を払拭しようと笑うと、ナオにも笑みが戻った。
「ええの? オプションもつけてくれて、たくさん払ってくれたのに」
「俺は稼いでるから大丈夫。42万ウォンなんて大したカネじゃないから」
精一杯の強がりだ。言うまでもなく記者にとっては涙が出るほどの大金だ。この男にはカラダを開かなくて済むと悟ったナオは饒舌になった。
「ホストの彼氏」との恋愛にはカネがかかる
そしてナオは、韓国に来た経緯を話し始めた。
日本でデリヘル嬢だった彼女は、ホストをしている彼氏に入れあげたあげく、自然と借金が膨らんでいった。あくまでナオの口を借りて説明すると、「自分の恋愛にはカネがかかる。そして自分は恋愛を続けたいから、もっとたくさんデートがしたいからお金が必要になった」という。
それは週5回のデリヘル勤務では賄えないほどの“高額デート”となっていた。デート場所のほとんどがホストクラブだったのだから、必然の流れだったのかもしれない。
「デリヘルに加え、ソープとの掛け持ちの瀬戸際にいたとき、助け舟を出してくれたのも彼氏だった」
とナオは嬉しそうに語るが、やがて、一人の男を紹介されたという。「紹介された」とナオは言ったものの、実際には、LINEを教えられただけの“紹介”だった。その男は海外に女を派遣するスカウトだったのだ。