川勝前知事の退任で静岡のリニア工事はどうなったか
「リニア中央新幹線は静岡県に何のメリットもない。デメリットだけである」
「370万人の県民に何のメリットもないリニアなど静岡県には要らない」
反リニアに徹した川勝平太前知事がことし5月に突然辞職して半年以上が過ぎた。
川勝氏の反リニア路線から、リニア工事推進に舵を切った鈴木康友知事だったが、南アルプストンネル静岡工区の着工は一向に見えてこない。
リニア全体で見れば、川勝氏から鈴木知事へのバトンタッチで進展したこともあった。「静岡―山梨県境のボーリング調査問題」では、11月にようやく静岡県内10メートルの地点まで調査が進んだ。だが、これは工区としては山梨工区の話であり、静岡工区の話が進んだわけではない。
2035年にリニアが完成している保証はない
未着工の最大の理由は、着工へ向けて「静岡県のメリット」が明らかになっていないことである。
鈴木知事が知事選の公約に掲げた「リニア開通に合わせた東海道新幹線静岡空港新駅の設置」について、これまでのところ、JR東海との対話はなく、表面的には放り投げたかっこうのままとなっている。
そんな中、12月5日の12月静岡県議会本会議・代表質問で、自民党会派の大石健司県議が「静岡工区の着工に向けての静岡県のメリットが明らかになっていない」などとした上で、「(鈴木知事が会長の)静岡空港新駅に向けて設置された期成同盟会が有名無実となっている。期成同盟会をしっかりと機能させてJR東海に強く働き掛けるべきだ」などと鈴木知事の政治姿勢をただした。
この質問に対して、鈴木知事は回答を避けて、担当部長にゲタを預けてしまい、担当部長は「長期的な取り組みであり、丁寧に進めていく」とまるでひとごとのような回答でごまかしてしまった。
リニア工事の最大の難所とされる南アルプストンネル静岡工区(8.9キロ)の着工ができたとしても、JR東海は、工事完了まで最低でも10年掛かる見通しを明言している。
つまり、来年2025年に着工できたとしても、2035年に静岡工区のトンネル工事が完了できるかわからないというのだ。