年末はさらに物価高…2010年代以降は肉より「魚高傾向」
食料品をはじめいろいろなものの値段が上がって生活を苦しめている。年末をひかえ、年越しにも苦労しそうだ。そこで、物価の高騰とその影響について国際比較を交えながらデータを見ていくことにしよう。
物価やインフレの状況については、消費者物価指数の上昇率で追うのが定番であるが、より実感に近い具体的な品目の値段の動きで見てみよう。
家計調査の結果から家庭で消費される肉と魚の価格(100グラム当たり単価)の推移を図表1に示した。物価の動きは、本来は、同じ品質の同じものの値段がどの程度上がったかを示す消費者物価指数で把握すべきであるが、ここでは、例えば、肉の中で高い牛肉を多く消費するようになれば肉の単価が上がる家計調査の重量当たりの購入単価のデータを使っている点に注意しながら数字を見てほしい。
肉(生鮮肉)と魚(生鮮魚介)の単価は、1980年代までは、肉のほうが魚より高かったが、1990年代以降、牛肉自由化の影響による安価な輸入牛肉の増加や、全体的な牛肉価格の低下などにより、グラム単価でほぼ同じとなり、バブル後の価格破壊と呼ばれたデフレ経済の中で、肉も魚も傾向的に低落する状況がけっこう長く続いた。
その後は、2003年の米国BSE牛発見に伴う輸入禁止による肉の価格上昇、魚については2006年に資源量の制約や中国など世界的な水産ブームの影響で魚の単価上昇という一時的な変化はあったもののおおむね横ばい傾向が続いた。
ところが、2013年以降は円安の影響もあって肉も魚も単価が上昇に転じた。2015年以降、肉は横ばいかじりじりと高くなる状況であったが魚のほうは急速な価格上昇に転じた。
この結果、肉と魚とでは、長い間、肉のほうが高い値段だったが、2010年代以降は基本的に魚高傾向が続いている。
しかも、肉と比べて魚には割高感がある。グラム単価が同じでも、魚は骨や頭尾、貝殻など不可食部分がかなりあるため、身の部分では割高と感じられているのである。
小中学生の子供のいる家庭の6割近くは、夕食に魚介料理を食べる頻度が週2日以下となっているという調査結果がある。その理由をきくと、「肉より割高」が第1位であり、第2位の「子どもが魚介類を好まない」、第3位の「調理が面倒」を大きく上回っていた〔(社)大日本水産会「水産物を中心とした消費に関する調査」2004年度〕。
こうした点から消費量も肉が横ばいであるのに対して魚は低迷している。