「犯人グループは200億円は設けた」

江崎社長は、兵庫県西宮市の自宅から3人組の男に誘拐され、大阪府茨木市の水防倉庫に監禁され、自力で脱出した。オレは、偶然にも、その水防倉庫と淀川を挟んだ岸辺にある家に生まれたんだ。土地勘は十分というわけだ。

さらに、オレの通っていた関西学院大学が西宮市上ヶ原にあり、事もあろうに、その大学の前に、3人組が誘拐に入った江崎社長の本宅があったのだ。

そのうえ、オレは「殺しの軍団」とまで呼ばれていた柳川組柳川次郎組長の秘書までやっていた。それゆえ、七年前の事件発生直後から、オレの名前が挙がっていたというのだ。

大下英治、許 永中『許永中独占インタビュー「血と闇と私」』(宝島SUGOI文庫)
大下英治、許 永中『許永中独占インタビュー「血と闇と私」』(宝島文庫)

捜査員は、オレを挑発するように言うのだ。

「専務にも会って、聞いてきたのだ」

「専務」というのは、許永中のことだ。

「専務の言うには、あんな大仕事が出来るのは、小早川しかおらんと言うとるのや」

許永中が、そんな人のことまで言うわけない。

俺は、捜査員に言ってやった。

「ご明察、オレが犯人です。そのかわりイトマンの起訴は取り下げてくれ。そっちでいこうや」

結局、「グリコ・森永事件」での騒ぎはあくまで陽動作戦にすぎない。犯人の本当の狙いは、カネだ。株価操作だ。この事件の裏で200億円はたっぷり儲けたはずだ。高笑いしているはずだ。〉》

真犯人は特定されていた

結局、色々あったがグリコ・森永事件の捜査は真犯人にたどり着かないままで終結した。

報道には一切乗らなかったが、グリコ・森永事件の真犯人は特定されていた。特に警察庁関係者で知らない者はいない。ただ、証拠がなかった。

その犯人グループもすでに鬼籍に入った。電話をかけてきた女は、沖縄で飛び降り自殺。メンバーには子供もいたが、死んでいる。

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