ほかの国では失われた伝統が残っている

そして日本の皇室は、欧州や中東の王族とはそのあり方がまったく異なります。

衣装や伝統が西洋社会のものとは別物ですし、宗教も言葉もまったく違います。とにかく異なる文明に属しているのです。

ほかの地域の人々から見ると大変エキゾチックで、ミステリアスに映ります。そしてその王朝の人々がイギリスにやってくるというのは、やはり大変なことなのです。

同じ王朝がずっと続いている点からみても、日本の皇室は特別な存在です。王朝は一般に、権力が変われば崩壊するのが当たり前です。政権交代時には関係者は皆殺しになるのが歴史の“定番”です。

ところが日本の場合、南北朝の争いなどはあったものの、朝廷は長い間継続されており、権力闘争とは異なった位置に属してきました。「皇室の本質=司祭」だとはいえ、それでも王朝が崩壊することなく継続している状態は、特異なのです。

日本人は気がついていませんが、皇室が中世以前からの伝統を保存している点も大変重要です。ほかの国では王朝崩壊に伴い、文化財や伝統も消えるのが当たり前です。

洗練された文化と長い歴史を誇る皇室

また意外に聞こえるかもしれませんが、イギリスでは多くの人が日本の皇室にまつわることに大変な興味を持っています。これは王室が徳川幕府や皇室から贈られた品を展示した際、多くの見学者が訪れた事実からもわかります。

今回の天皇皇后両陛下のイギリスご訪問に関してはかなり前からイギリスのメディアで報じられ、ニュースでも大きく取り上げられていました。広く一般に無料配布される新聞にも、天皇陛下のお写真が掲載されたほどです。

ほかの国の王族もイギリスを公式訪問することはありますが、メディアにここまで取り上げられることは稀です。

やはりこれは日本という国がイギリスに限らず欧州全体から見て「非常に特別である」ことの表れでしょう。先ほども述べたように日本には欧州に劣らぬ洗練された文化があり、皇室の歴史は欧州のどの王室よりも長いのです。