伝統や権威を重んじる国民性の表れ
こうして王室や皇室を現在でも維持できている事実は、その国の人々が伝統や権威を重んじており、「受け継いだものを維持していこう」と強く意識してきたことの表れです。
そしてまた、暴力的な革命や過激な変化を好まないことも示唆しています。イギリスは無血革命をおこなったことで有名なように、実は過激な革命を嫌う土地です。
資本主義が発達しており、市場経済を信奉する国ですが、そのいっぽうで伝統を維持し穏やかな変化を好みます。イギリスの本質は、実は「保守」です。
その点、過激な革命を好むフランスやイタリアとは異なっています。また現実よりも理念を優先してしまうドイツとも違います。
そして日本も遠く離れているとはいえ、イギリスに似た部分があります。たとえば明治維新でも内戦はあったものの、徳川家は全員抹殺されたわけではありません。そして皇室も長年、維持されてきており、ここまで長い王朝が保たれている国は非常に珍しいのです。
イギリスが特別な皇室外交を続ける理由
これはやはり日本がイギリスと同じ島国で、過激な変化を好まない点が要因だと思います。イギリスはそのような日本の歴史に自分たちと似たものを感じているのです。
イギリスは多様性を重んじる国ですが「あまりに異質な人」はやはり嫌います。「能ある鷹は爪を隠す」というような謙虚さや、中庸や灰色の対応、「行間が読める人」を好みます。
日本人はそのようなイギリス人の求める資質を持っています。そして伝統や権威をある程度好み、儀式的なものも残そうとします。合理的でありつつ非合理な部分も保とうとする。イギリス人はそんな日本を自分たちと似た部分のある国だととらえています。
だから日本の皇室を特別扱いするのです。そんなイギリスが皇室外交を通して日本との友好関係を強化しようとするのはやはり東アジアの安定化を望むからです。
そして東アジアでは「唯一信用できる同盟国」として日本に期待する部分が大きいのです。皇室を歓待することは「日本の有権者にイギリスにとって良いイメージを持ってもらい、関係を強化したい」という気持ちの表れです。そういったイギリスのメッセージを今回の天皇皇后両陛下のご訪問から読み取っていただきたいと思います。