労組はもはや労働者の代表ではなくなった

その理由は、労働組合の組織率にあります。労働組合の組織率はピーク時の1994年には24.1%でしたが、2022年には16.5%に低下しています。連合加盟に限ると、組合員は約700万人(*6)で、全雇用者6076万人の11.5%にすぎません。

しかも年々、労働組合員数は減少(*7)しているうえに、非正規労働者の多くを占めるパートタイム労働者の労働組合推定組織率はわずか8.5%(*8)(2022年)です。

非正規労働者の全雇用者に占める割合は37.0%(*9)(2023年)に上っています。日経連が「新時代の『日本的経営』」を公表したのは1995年5月でした。日経連は、この報告書で労働者を三つの形態、すなわち幹部候補者、専門職、一般職に分け、後者二つを有期雇用契約に切り替えて、人件費の抑制を図ろうとしました。

水野和夫『シンボルエコノミー 日本経済を侵食する幻想』(祥伝社新書)
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その結果、一気に非正規労働者の割合が増加しました。報告書が公表される前年の1994年の非正規労働者の割合は20.3%、971万人でしたが、2023年には2124万人と2倍以上に増加しています。

連合のホームページには「“働く”を支える。働く人のくらしを守る」と掲げられています。「日本労働組合総連合会」と名乗っているわけですから、連合の組合員だけを守る存在ではないはずです。

しかし連合は、組合員の暮らしは守っているようですが、日本の労働者全体の暮らしを守っているとは言い難く、労働者全体の利益を代表する団体ではなくなったようです。

*6 2023年「労働組合基礎調査」の結果に対する談話によれば、「連合については、産業別組織を通じて加盟している組合員数が681万7000人(前年比1万9000人減)、地方直加盟を含めた総数では692万9000人(前年比2万3000人減)、全労働組合員数に占める割合は69.7%(前年比0.1ポイント増)となった」。
*7 労働組合員数は1997年に1217万人だったが、2022年には993万人と大幅に減少(労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」)。
*8 データは労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」。
*9 2023年の雇用者数は6076万人、うち正規の職員・従業員は3615万人、非正規の職員・従業員は2124万人。非正規のうちパート・アルバイトは1489万人(総務省「労働力調査」)。

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