なぜストレッチされた目標を継続して達成できるのか。部下に対し「高い期待をしているから」というのが小川自身の見方である。ただし、期待する内容は数値目標の達成ではない。

「自分ができていないと感じているところを確実に突かれ、どうすればできるかを考えさせられるんです。たとえばいまは、小川がつくったチームを自分のチームとしてさらによくするにはどうすればよいか、という要求をもらっています」(藤本)

この「期待」は小川からメンバーへの一方通行ではなく、メンバー間、そしてメンバーから小川に対しても持つようにと小川は要求している。給料をもらうのだから数字は達成して当然。それ以上に「おもしろいチーム」をつくりたいという思いが小川にはある。

「せっかく何かの縁があってできたチームだから、世界一のチームにしたい。グーグルには世界中の優秀な人が集まっているのだから、その人たちに勝てたらおもしろくないですか、と」(小川)

ふだんから賑やかで「会社で一番うるさいミーティングをする」(広報)という広告営業チームだが、4年半前に小川が入社したときのオフィスは、まったく違った様相だったという。

「全員がじっとパソコンに向かってカチャカチャやっていて、とても営業の職場とは思えなかった」(小川)

2年前に広告営業チームをつくることになったとき、小川はいくつかのルールを決めた。たとえば会議でのパソコン持ち込み禁止と発言の義務づけである。「発言しない者に生存権はない」(小川)。白石は入社早々、このルールの洗礼を受けた。

「入社初日の会議で右も左もわからず何も発言しなかったら、小川から『おまえ、次回も発言しないのならもう辞めろ』と言われ、なるほどと」(白石)