共通指標における成績を学部への予算に反映
共通指標の影響は学内にも深くおよぶ。というのは、ほとんどの大学で共通指標を学内にも適用して、学部への予算配分に利用しているからである。つまり、共通指標における成績を学部への予算に反映させるのである。
なぜ、学内で共通指標を用いるのか。理由は、大学全体としての成績をあげるには、内において学部を巻きこまなければならないからである。たとえば「常勤教員当たり研究業績数」の場合、実際に論文や書籍を書くのは各学部にいる教員であり、教員ががんばらないと大学全体の数字はあがらない。ただ、大学全体としての成績への貢献度は当然、学部によって差がある。そこで各学部の貢献度を予算配分に反映させるというわけである。こうして、大学にかかる圧力は学部に伝達されるのである。
数値の呪縛はさらに末端の教員にまでおよぶ。今日、教員個人に対する勤務評価はほとんどすべての大学で導入されている。よくあるのはポイント制である。すなわち、発表論文の本数、担当授業数、指導学生の数、役職の有無などについて、過去1年間の成績をポイント化して評価するのである。筆者なども大学在職時、毎年このポイントを計算させられた。結果は、俸給や研究予算などに反映される。
いたるところで数値目標に駆り立てられている
大学にとっての競争はそれ以外にもある。いわゆる外部資金は大きな収入源の一つだが、これは競争を経て配分されることが多い。たとえば、国際化推進などをテーマに公募される助成プロジェクトの場合を考えてみよう。助成金を獲得したいと考える大学は、プロジェクトの実施計画を申請書にまとめあげて応募する。申請書は政府の側で審査され、採否が決まる。通例、採択枠より多数の応募があるから競い合いになる。
ここでもKPIが大きな役割を果たす。実施計画では、過程をできるだけ数値で表すことが求められるからである。たとえば、「○年後の中間評価までに○○人の学生を留学派遣する」、あるいは「最終年までに国際シンポジウムを○○件開催する」などの類いである。この数値目標がどの程度野心的かが、審査での首尾をわける大きな材料となる。と同時に、採択されれば、計画進捗のチェックを受ける際の指標ともなるのである。
このように、今日の大学はいたるところで数値目標に駆りたてられているといってよい。
もっとも、これは企業の世界では当たり前であり、単に大学も世間なみになっただけのこと、という見方もあるかもしれない。それについては後段で考えることにしよう。