バイデン政権の「及び腰」に批判集中
アメリカの支援としては、ここ数日で急速な進展が目立つ。長距離戦術ミサイルシステム「ATACMS」のロシア国内に対する使用禁止を解除したのに続き、対人地雷の供与と使用容認を発表した。アメリカは禁止条約を批准していないが、ウクライナは批准している。人道的観点から議論を呼ぶことは確実だ。
一方、アメリカの積極的な支援策は遅きに失したとの指摘も噴出している。米シンクタンク・大西洋評議会のユーラシアセンター上級部長で、元駐ウクライナ米大使のジョン・ハーブスト氏は、バイデン政権のウクライナ支援政策について「バイデン氏はプーチン大統領の核の脅しに影響され、ウクライナが必要とする兵器システムの提供に及び腰だった」と批判している。
同氏はATACMSについても、「バイデン政権はようやく、ウクライナによるロシア国内の軍事施設への使用を許可した」と言及。戦局への影響については、「モスクワはすでに、多くの補給拠点と戦略的空軍力をATACMSの射程外に移動させており、効果が低下した」と語り、影響は限定的であるとの見方を示す。
2022年の侵攻以来、ウクライナでは推定100万人の兵士と市民が死傷し、出生数が死亡数を下回るまでに至っている。ニューヨーク・タイムズ紙は、爆撃で電力インフラが破壊され、寒く暗い冬の間、ウクライナ国民は1日最大20時間の停電を強いられていると報じている。
モスクワに広がる「控えめな希望」
ロシア側の認識はどうか。ニューヨーク・タイムズ紙は、クレムリンに「控えめな楽観論」が広がっているとしている。
政権内部に精通する元ロシア高官は、同紙に対し、年内の停戦合意と来年春から夏にかけての和平実現について、淡い希望的観測があるとコメントしている。ただし、トランプ陣営は「プーチン氏が合理的な和平交渉を拒否する場合、より制限の少ない形でウクライナに武器を提供する」と表明。また「将来のロシアの侵略を防ぐため、和平合意の一環としてウクライナに武器を供与する」とも述べており、トランプ政権は一定の警戒感を維持するとみられる。
ロシアのペスコフ報道官は同紙の取材に対し、「少なくとも低いレベルでの対話が再開されるという控えめな希望がある。現在は対話が全く存在していない」と述べる一方で、「バラ色の眼鏡はかけない。選挙運動中の発言と、大統領執務室に入ってからでは、すべてが異なることをよく認識している」と慎重な見方を示した。