スタック氏は、「アメリカはウクライナに対して、自らが望む以上の、あるいは実現可能な以上の約束を永遠に繰り返し、ロシアを敵対させ、ウクライナをプーチン氏の怒りにさらす脆弱な状態に置いている」と指摘する。
ゼレンスキー氏は「早期終結」に期待、越境攻撃の狙いは
トランプ氏の勝利を、ウクライナはどう捉えたか。ウクライナのゼレンスキー大統領は、トランプ氏が米大統領に就任したことで、ロシアとの戦争が「より早く」終結すると期待を示す。
米CNNによると、ゼレンスキー氏はウクライナ公共放送のラジオインタビューで、ウクライナ戦争は「ホワイトハウスを率いることになるこのチーム(トランプ氏)の政策の下で、より早く終わるだろう」と語った。同氏はまた、「我々は戦争が来年中に外交的手段で終結するよう、あらゆることをしなければならない」と強調し、早期終結への意欲を示した。
ウクライナが焦燥を募らせる背景に、戦局の行き詰まりがある。2023年のウクライナによる大規模反攻では、目指していた大規模な領土の奪還を実現できなかった。ロシア軍は東部と南東部で陣地を確保しており、主な戦闘は東部のドンバス地域で展開されている。
CNNは、ウクライナ軍はロシアとの戦闘で厳しい状況に置かれたと指摘する。ロシア軍は人員と武器の優位性を生かして東部・南東部の前線の要所で前進を続け、クラホベ市などの重要拠点に接近している。
ゼレンスキー氏は「確かに困難な状況」だと認めつつ、「ロシア軍は1日当たり最大2000人の兵士を失っている。これは恐ろしい損失だ。彼らはこのような損失を出しながら前進を続けることはできない」と言及。ロシアにとっても情勢は厳しいとの見解を示している。
先月明らかにされた「勝利計画」では、ウクライナ国内に「緩衝地帯(DMZ)」が形成されるのを防ぐため、攻勢を継続する方針を打ち出している。BBCは、「ゼレンスキー大統領は一貫して、クリミアを含むいかなるウクライナ領土の割譲も拒否し続けている」と伝えている。
ウクライナ軍は夏にロシア西部のクルスク地域への攻勢に踏み切り、第二次世界大戦以来初めてロシア領土の一部を占領した。ゼレンスキー大統領はこの作戦について、ロシア軍をウクライナ戦線から引き離すことが目的だと説明している。専門家らは、クルスクで確保した領土が将来の和平交渉における交渉カードとなる可能性を指摘している。