バイデン政権は米製長距離ミサイルの使用を許可

バイデン政権は11月17日、アメリカが提供した長距離ミサイル「ATACMS」について、ウクライナがロシア国内への攻撃に使用することを許可した。エリック氏はこれに真っ向から異を唱えた形だ。

父であるトランプ氏の政策方針について、エリック氏は「(父は)地球の反対側で金を使うのではなく、教育制度、高速道路、道路、南部国境の修復など、社会改善に使いたいと考えている」と説明。「一つの建物も残っていない都市がある。全てが迫撃砲や砲撃で破壊され、倒壊している。この殺戮は止めなければならず、父ならそれを止められる」と強調した。

また、トランプ氏の側近となる副大統領候補のJ.D.ヴァンス氏も、米国によるウクライナ支援の継続に強い疑問を投げかけている。

「ウクライナが譲歩すれば死者は出なかった」トランプ氏の持論

トランプ氏自身もウクライナ戦争の終結に意欲を燃やすが、大前提として氏は、ウクライナが一定の譲歩をすべきであるとの立場を崩さない。

今年9月には、ノースカロライナ州での選挙演説で持論を述べている。「(ウクライナが)少し譲歩していれば、誰もがまだ生きていて、すべての建物が建っていて、すべての塔が2000年経っても存在していただろう」と指摘。その上で「今は何の取引ができるというのか。すべてが破壊され、人々は死に、国は瓦礫の山だ」と述べ、国土を死守したいウクライナ側を攻撃するとも取れる発言を行った。

米ワシントン・ポスト紙は、ウクライナは現在、ロシアの侵攻を食い止めるために、毎月数十億ドル規模の経済・軍事支援を必要としていると指摘。トランプ氏は米納税者の負担を懸念しており、クリミアなどの一部領土を平和のために手放す必要があるとの見方を非公式に示している、と解説する。

アメリカはウクライナへの最大の武器供与国となっている。英BBCは、ドイツの研究機関であるキール世界経済研究所の集計を取り上げ、開戦から2024年6月末までにアメリカが供与または供与を確約した武器および装備は、555億ドル(約8兆5700億円)規模に上ると指摘する。

その一方、戦争の長期化は結果的にアメリカの利益になるとの打算的な見方もある。

アメリカのロイド・オースティン国防長官は、ロシアによる侵攻から数カ月後、ポーランドで記者団に対し「米国はロシアの弱体化を望んでいる」と述べた。元ロサンゼルス・タイムズ紙モスクワ支局長のメーガン・スタック氏は、ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿のなかで、オースティン国防長官の真意として、勝利の見込みが薄い戦争を長期化させることで、ロシアの国力を削ぐという米国の思惑があるとの認識を示す。