自伝本を出版し、テレビ出演を果たす

ただ、礼拝の参加者が10~15人程度に増えたからといって、それだけで生活が成り立つほどの収入はありませんでした。参加者の方々からいただいていた献金や、講演会の謝礼などを原資として、自分が設立した宗教法人から月に5万円の給与を受け取っていたのですが、当然ながらこれだけでは生活ができません。

相変わらず実家暮らしを続けながら、平日は配送などのアルバイトでお金を稼ぎ、日曜は間借りのスナック教会で礼拝をするという生活を続けていました。このころの私は「アルバイトを辞めて、牧師の仕事だけで生活できるようになりたい」と祈り続けていて、現状を打開するためにさまざまな人に会いに行き、自分の活動をアピールしていました。

教会にある演壇の前で撮影に応じる進藤牧師。教会には大きなモニターがあり、礼拝では資料を映しながら説教説教をしている
撮影=プレジデントオンライン編集部
教会にある演壇の前で撮影に応じる進藤牧師。教会には大きなモニターがあり、礼拝では資料を映しながら説教説教をしている

ちょうどその頃、私の異色のキャリアが目に留まったのか、自伝本の出版オファーが舞い込んだのです。この本が無事に出版されると、テレビ出演も立て続けに決まり、ほとんどの民放テレビ局に出演することになりました。知名度が上がったことで参加者も増加し、最盛期は毎回40人ほどの参加者が訪れるようになったのです。

また、時間を見つけては、全国の受刑者と文通でやり取りすることで、献金も寄せられました。とはいえ、まだ牧師の活動だけで生活するのは難しい状況でしたが、着々と理想に近づいていきました。

4200万円の献金が集まり、自分の教会を設立

状況が急変したのは2015年。間借りしていた母のスナックが建て替えとなり、立ち退きを強いられたのです。ほかの場所を探す資金的な余裕がなかったため、2018年までの3年間は大家さんに頭を下げてスナックでの礼拝を続けさせていただきました。

教会として使える次の物件を探すなかで、最初は賃貸で十分と考えていました。ところが、刑務所伝道や元受刑者の支援を続けるにあたって「牧師さんはともかくとして、うちの物件に刑務所から出てきた人が出入りしたり、寝泊まりするのははちょっと……」と、不動産業者や大家さんに断られ続けてしまったのです。

そこで、自分たちでお金を集めて新しい教会を設立することにしたのです。

当時の貯金額は350万円でしたが、新しい教会のための拠点を探しているとニュースレターを出したところ、3年間で2000万円近くの献金が集まりました。そのうえ、クリスチャンの友人らがお金を融資してくれることに。なかには1000万円も貸してくれる人もいて、結果的に4200万円が集まりました。

そして、2019年、いま現在の活動拠点である教会を川口市の南鳩ヶ谷に設立しました。2012年ごろから牧師の収入だけで暮らせるようになっていましたが、まさか自前の建物を持つことができるとは思っていませんでした。