礼拝は午後2時半から、献金箱は廃止

はじめに手を打ったのが、礼拝の時間を午後2時半にしたことです。「礼拝は日曜の午前中に行うものだ」という業界の慣習がありますが、実は明確な決まりはありません。

それに私自身、ヤクザとして夜の世界に入り浸り、母が深夜までスナックを営む姿も見てきたので、「礼拝に行きたくてもかなわない層がいるだろう」と考えたのです。予想通り、礼拝時間を変えたことで、水商売をやっている方など、開始時間が朝からだったら参加できないような方が少しずつ教会に来てくれるようになりました。

次に変えたのが、礼拝の後に「献金箱」を回さないことにしました。キリスト教の教会では、礼拝が終わった後に宗教的な寄付である「献金」をするための箱を回し、参加者が自分で決めた金額を箱に入れるという習慣があります。

ただ、私が元ヤクザという経歴もあり、教会を訪れる人のなかには、元受刑者や薬物依存症者など定職に就けない人も少なくありませんでした。そうした人々は、金銭的に余裕がなく、献金箱を渡してもお金を入れることができません。私としても心苦しいし、こちらの印象も悪くなるだけです。もちろん献金が欲しいのは山々ですが、まずは人が集まるようになるまで、献金箱をまわすのはやめることにしました。

この「献金箱を回さない」という特殊な運営方針は、2012年まで続きました。

「普通の教会」には来ないような人も参加者に

あるとき、水商売をやっている若い女性が礼拝に参加してくれたことがありました。

彼女は同棲している彼氏にお金を貢いでいるようで、常に金銭的に困っている様子でした。そんな彼女が「ほかの教会は朝から礼拝をやってるから参加したくてもできないけど、進藤先生の教会なら顔を出せる。献金箱も回ってこないから、お金がなくても気軽に参加できるし話も聞いてもらいやすい」と言ってくれたことがありました。

彼女のように朝まで働き、さまざまな理由で金銭的に困っている人が参加してくれたことで、「自分のやっていることには意味がある」と改めて感じるようになっていきました。

こうした工夫のかいもあってか、ぽつりぽつりと常連の参加者が増えていきました。このころにはJTJ宣教神学校の先輩らも協力してくれるようになり、間借りの教会を始めてから5年ほど経った2010年頃には毎週10~15人ほどが訪れるようになりました。