「介護は権利かサービスか」国民的議論は避けて通れない
だが今後、否応なしに高齢者医療・高齢者福祉の問題は政治的争点になり、高齢者側の負担増を求める声は政治的にも社会的にも大きくなることは必至だ。
その議論が沸騰しているさなか「介護は権利である」というロジックが世の中的に広く周知されてしまえば、「介護サービスの自己負担大幅増・サービスの大幅縮小」の方向の議論は停滞し、リソースもマンパワーも徴発して「権利の保障」に動く可能性はある。たんなる「市場原理の問題」から「憲法上の権利問題」のレイヤーに一気に格上げされてしまうのは、本来それくらいに政治社会的インパクトがあるのだ。
介護サービスの破綻にいまこれだけ多くの国民世論が懸念や反発を示している以上、「介護は権利かサービスか?」という問いに対する国民の共通認識をすり合わせるための議論は避けて通れないだろう。できれば、早いうちにやっておいたほうがよい。
この議論を全社会的に興したせいで「国民のほとんどが介護を権利だと思っていました!」という薮蛇が出るかもしれないが、それでも議論のテーブルを設けて、落としどころを探らなければならない。