やりたくないことを実行することのメリット、デメリットを書き出す

【澤円】先のチェックシートで、「少し心配」「かなり心配」だった人はどうすればいいでしょうか。「朝から憂鬱だな」「会社に行きたくないな」といった気持ちは、程度の差こそあれ誰もが感じることですよね。うつ感情から回復する方法を教えてください。

【中島輝】「会社に行きたくない」「あの人に会うのが嫌だな」といった気持ちは、誰もが抱くものです。そこで必要となるのは、「客観視」です。感情は目に見えないものですから、やりたくないと思ったことをやることのメリットとデメリットを紙に書き出すなどして、可視化するのです。

「会社に行きたくない」と思ったなら、「会社に行くと、どのようなメリットがある?」「行かないと、どのようなデメリットがある?」と考えましょう。すると、「ここで会社に行かないということを選択したとして、自分の大切な人生は本当にそれでいいのだろうか?」といった具合に、「行きたくない」という感情から距離を置いて冷静に考えることができます。感情を感情で考えると堂々巡りをするだけですが、感情を思考で乗り越えるのです。

【澤円】「社会人なんだから、会社に行ってあたりまえだ」というように、義務感から行動を起こすのではなく、自分にとってのメリットを見出すことで、自ら「会社に行こう」と思えるようになるということですね。

澤円さん
写真=石塚雅人
澤円さん

「ご褒美をもらうためのプロセス」に上書きする

【中島輝】そうですね。また、うつ感情を軽減するには、「if-thenプランニング」というメソッドも有効です。これは、「もしXが起きたら、Yをする」というように、あらかじめ行動を決めておくというメソッドです。

例えば、「『会社に行きたくない』と思ったときにきちんと会社に行けたら、帰りに大好きなスイーツを買う」と決めておくなど、ご褒美を用意しておくというわけです。そうすれば、思考はそのご褒美にフォーカスしますから、「会社に行きたくない」という感情をスムーズに乗り越えることができるでしょう。

【澤円】「〜したくない」という感情を「ご褒美をもらうためのプロセス」にする。つまり、感情の意味づけを変えるのですね。