レーシックで失明寸前になった人
42歳男性、トラック運転手のAさん(※)。視力を回復させようと、20代の時にレーシック手術を受けましたが、約20年がたち、なんだか見えにくくなってきました。
※筆者註:プライバシー保護のため、患者の年齢・名前は改変しています。
「レーシックの効果が切れてきたのかな……」
不安になったAさんは、手術を受けたクリニックに相談しようと思いましたが、すでにクリニック自体がなくなっていました。仕方がないので、近所の眼科を受診したところ、「緑内障」と診断されました。この時点で、左右どちらの目も、視野の4分の3がすでに見えなくなっていました。視力は裸眼で1.2と良好でしたが、病気で視野が欠けたために「見えにくく」なってしまったのでした。
医師から「かなり進行している。このままいくと失明してもおかしくない」と言われたAさん。どうにかしなくてはと、緑内障の治療を専門とする当院を受診しました。さっそく目薬での治療を始めましたが、効果が出ない。手術を受けようか、決められないでいるうちに視野は狭まっていくばかり。視力も急激に衰え、今ではメガネをかけて、右目0.1、左目0.2という失明寸前の状態になってしまいました。
もともとやっていた配送の仕事は、運転ができないので退職することになりました。次の職を探してはいますが、この視力で雇ってくれる所はなかなかありません。
視力はよくなっても「病気のかかりやすさ」は変わらない
なぜこんなことになってしまったのでしょうか。ポイントは2つあります。
まず1つ目は病気のかかりやすさの問題です。近視がある人というのは、眼球の長さ「眼軸」が長くなります。
この眼軸は、健康的な人だと24ミリ程度が一般的です。しかし、近視の人の眼軸はのびた状態になっていて、
近視の人が眼の病気を発症する確率が高くなることがわかっていますが、これは眼軸がのびることで、視神経のゆがみが大きくなるためです。具体的には、強度近視の人は、近視がまったくない人と比べて、発症率が、緑内障で2.92倍、網膜剝離で12.62倍、黄斑症で485.08倍になるという研究があります。
レーシックやICLは角膜を削ったり、レンズを入れたりすることで見え方は矯正できますが、眼球の形が変わるわけではありません。つまり、病気になりやすい目ということは変わらないのです。
メガネやコンタクトであれば、作り変えるときなどに眼科に行く機会もあったかもしれません。しかし、Aさんの場合、視力には問題がないために、眼科に定期的に通うことがありませんでした。これは、病気の発見が遅れてしまった1つの要因といえるでしょう。