極限のストレスにさらされた人間に起きること
極限までの寒さとストレスにさらされると、残りの「120時間」を頭で理解できなくなる。睡眠なしの5日半は、小さく分割できない。これだけの長い時間を、「手際よく」攻略する方法なんかありゃしない。だからシール志願者は初めての「波責め」の間に、必ずこの素朴な疑問を自分に投げかけることになる。
「なぜ俺はここにいるんだ?」
真夜中に低体温症になりかけ、怪物みたいな波に呑み込まれるたび、混乱した俺たちの頭に、この単純な疑問が浮かんだ。なぜって、誰もシールになる「義務」なんかないからだ。
俺たちは徴兵されたんじゃない。シールになるっていうのは、「自分で決めたこと」だ。そして試練のさなかに、このたった1つの小さな疑問について考えながら、俺は悟った。俺が訓練を受け続ける1秒1秒が、「俺の選択」なんだ、と。
シールになる、という考えそのものがマゾみたいに思えてきたよ。俺は自分から志願して拷問を受けている。それはまともな頭には理解できないことだ。だからこそ、この疑問はあれだけ多くの男たちを押し潰すんだ。
地獄はまだあと5日も残っている
もちろん教官は全員このことを知っていた。だから、訓練生をどやしつけるのをすぐにやめた。代わりに、サイコ・ピートは夜が更けると、思いやりのあるアニキみたいなやさしい言葉をかけてきた。
熱々のスープや温かいシャワー、毛布はどうだ、兵舎まで車で送ってやるぞ、と。これはやめたい者が飛びつきたくなる罠で、そうやって何人もの訓練生にヘルメットを置かせてきた。サイコは屈した者たちの魂を奪ったんだ。
彼らはこの素朴な疑問に答えられなかった。なぜなのかは俺にもわかる。金曜までこれが続くというのに、今はまだ日曜で、すでに一生で一番寒い思いをしている。
こんなことは自分にも、誰にも耐えられない、と思いたくなる。結婚しているやつらは、「凍えて苦しむ代わりに、今頃美しい嫁さんと家で抱き合っているはずなのに」と考える。独身のやつらは、「今頃かわいい子をナンパしているはずなのに」と考える。