鉱夫たちが竪坑を通って坑底まで降りる「海の下の炭鉱」

端島で産出した石炭の用途は、まずは製鉄業やガス工業向けが半数以上の割合を占めていた。日本の鉄鋼業では、世界の各産地から原料の石炭を輸入し、それぞれの石炭を配合することで安価かつ高品質のコークスを製造していた。端島の石炭はコークス製造時に生成されるガスも燃料として重宝された。そのため、複数の大手ガス会社からの需要も多かった。

製鉄関連、燃料ガス関連の需要の他に、端島産の石炭は船舶燃料用にも用いられた。暖房用や浴場用といった一般用途、さらには窯業用などもあったが、いずれもごくわずかの数量にとどまっている。

端島は海底炭鉱であるため、竪坑を通って坑底まで降り、そこから水平坑道と斜坑を通って掘削現場に至る。端島における主要稼働区域下の炭層は、海面下600m付近までは傾斜が40〜45度なのだが、それより深い場所では傾斜がきつくなり、海面下700m以深では60度を超える。この急傾斜では坑内掘りの機械化が難しく、地上への石炭運搬などでも制約が生じることもあった。