テレビ局のドル箱のひとつドラマ番組の収益構造が大きく変化している。制作者はCM収入を左右する視聴率だけでなく、ネット広告費など2次収入につながる「SNS投稿(バズ)」や「見逃し再生」の数にも神経を配っている。次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「今年の夏と秋のドラマの中ではフジテレビの作品がSNS上で大きな話題となり、再生数も断トツに多い」という――。
フジテレビ「わたしの宝物」オフィシャルサイトより
フジテレビ「わたしの宝物」オフィシャルサイトより

秋ドラマが出そろった。

初回の世帯視聴率では、「相棒23」(テレビ朝日系・水曜21時)、「ザ・トラベルナース」(テレビ朝日系・木曜21時)、「海に眠るダイヤモンド」(TBS系・日曜21時)と人気シリーズや話題となっている3作が2桁スタートと好調だ。

だが、ドラマ制作者はこの視聴率さえ稼げば万々歳という時代は今や昔。彼らが世帯視聴率のほかに重視しているのはこの3点だ。

① 広告主が重視する「若年層の視聴率」
② ネット広告費など2次収入につながる「SNS投稿(バズ)」
③ ネットでの2次収入になる「見逃し再生」

秋ドラマで、②SNS投稿(バズ)と③見逃し再生で他を圧倒したのは、前出3作ではなく、松本若菜主演「わたしの宝物」(フジテレビ系、木曜22時)だった。

実は夏クールでも、「視聴率が高いドラマ=バズや見逃し再生でも好調」とは言えない現象が起きていた。とりわけSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)のSnow Manの目黒蓮主演「海のはじまり」(フジテレビ系・月曜21時)が初回から、両指数で断トツだったのである。

バズと見逃し再生がテレビ局にもたらす「新たな収益源」の現状と、秋クールの展望を、「海のはじまり」などの夏クールの豊富なデータ結果から分析してみよう。

視聴率・バズ・見逃し再生の関係

まずバズの可能性を、夏クールのGP帯(19~23時放送)ドラマで振り返る。

【図表】X投稿数・再生数・視聴率の関係
出典=ビデオリサーチ「Buzzビューーン!」、筆者作成

グラフの丸の大きさは全話の平均個人視聴率の大小を示す。

首位は、医療ものの二宮和也主演「ブラックペアン2」(TBS系、日曜21時)の6.8%だった。ただし、バズ総数も見逃し再生数も3位。この2項目に関しては視聴率4.4%の目黒蓮「海のはじまり」に大きく水をあけられた格好だ。

また視聴率が「ブラックペアン2」の半分ほどにとどまった松本若菜主演「西園寺さんは家事をしない」(TBS系、火曜22時)と比べても、再生数で肩を並べられ、バズでは逆転されてしまった。どうやら視聴率の大小は、バズや見逃し再生に直結しないようだ。

学園ものの山田涼介主演「ビリオン×スクール」(フジテレビ系、金曜21時)も、それを裏付ける。視聴率はGP帯で最低ランクだったが、バズで5位に躍進し、再生数も中位と大健闘した。逆に視聴率で同率3位だった松下奈緒主演「スカイキャッスル」(テレビ朝日系、木曜21時)は、バズで最低ランクだったためか、再生数でも順位を大きく落とした。

こうしてみると視聴率はリンクしないが、バズと再生数との間には相関関係がありそうだ。

特に顕著だったのが「海のはじまり」。バズで2位の1.6倍でトップになった結果、スマホなどで視聴した見逃し再生は2倍以上と極端に数字を伸ばした。放送後にSNSで評判を知り、見逃しサービスで見る人がかなりいると思われる。