バズから再生へのメカニズム
では、前出の3作品「海のはじまり」「ブラックペアン2」「スカイキャッスル」で、バズと再生数の関係を分析してみよう。
まず再生数は「海のはじまり」を1とすると、他2作品は順に2.4倍と3.1倍。そしてバズでは、1.6倍と15倍だった。数字に大きなばらつきがあり、明確な因果関係は見出だせない。
そこで初回から最終回までのバズを追ってみよう。
初回でのバズでは、「海のはじまり」が「ブラックペアン2」の2倍強、「スカイキャッスル」比では7倍となった。そして「ブラックペアン2」は終盤盛り上がったものの、3~5話が低迷した。
「ブラックペアン2」は医師としての腕こそ天才的だが、ダークヒーローという設定。しかもシーズン1との関係性など考察の余地も多く、多くの人が次の展開がどうなるのか気になったはずだ。ただしリアリティにやや疑問があり、人間関係や物語の展開など、情報過多で個々の登場人物の「心情」を推し量るのも容易ではなかった。そのあたりに、中盤のバズが盛り上がらなかった原因がありそうだ。
その点「海のはじまり」は、「心情」で視聴者を強烈に引き込んだ。
別れから7年、元恋人の水季(古川琴音)が亡くなって初めて彼氏である夏(目黒蓮)は、娘・海(泉谷星奈)の存在を知る。設定はかなり突拍子もないが、驚きや戸惑い、そして父になっていく夏の心の変化は、静かだがドラマチックだった。
さらに父娘を取り巻く人々の感情や想いにも刺さる部分が多かった。それが若い世代を中心に大量のバズと見逃し再生につながったのだろう。
リメイクと既視感
一方、「スカイキャッスル」にはハンディがあった。
そもそも初回のバズが、他2作に比べ極端に少ない。
「海のはじまり」は、2022年のヒットドラマで、バズも見逃し再生もばく大なものとなった「silent」(フジテレビ系)と同じチームが集結し、主演・川口春奈の相手役だった目黒蓮が今回は主演と話題性抜群だった。
「ブラックペアン2」も大ヒットした前作の続編で、物語の展開が注目を集めた。さらに二宮和也はじめ竹内涼真、小泉孝太郎、内野聖陽などキャスティングも豪華だった。
これら2作と比べると、「スカイキャッスル」は見劣り感が否めなかった。
それが初回のバズ数にもろに表れた。さらに韓国ドラマのリメイクであり、上流階級の人々の熾烈な競争と複雑な人間関係という設定にも既視感があった。2話以降ずっとバズが1万に届かず、視聴率も見逃し再生も伸び悩んだが、SNSでの「視聴後の考察」が今ひとつ盛り上がらなかった。