バランスシートより「社員の意識」が大事
リーダーにとって最も大切な仕事は何でしょうか。それを端的に表したのが稲盛さんの次の言葉です。
「心がよくなると、よい人間になる。よい人間が集まれば、よい会社になれる。よい会社になると業績もよくなる。だから、心をよくできる人間がトップになるべきだ」。
明確なビジョンも戦略もあるが、社員が自分勝手で、文句ばっかり言っているようでは、よい会社にも、よい業績にもなりません。
夢を信じ、仲間を信じ、お客様のために進んで尽くすことができる、そのような素直で明るく前向きな、よき心を持った社員を育てることがまず大切になるのです。
この言葉は、経営者が社員の心をよくすることに注力すれば自然に業績もよくなることを教えています。
同じような意味で、「バランスシートより、社員の意識のレベルのほうが大事だ」とも話しています。会社に多額の資産があったとしても、社員の口からは不平不満ばかり聞こえ、やる気がなければ、いずれ衰退するのは間違いありません。
最大の仕事は“全社員の心をよくすること”
また、「心技体というけれど、心が8割」とも言っています。会社でいえば、技術力や資金力が大事だというけれど、社員の意識のほうが圧倒的に大事だということです。
稲盛さんは、リーダーに「社員の意識を変えられますか?」と問いかけ、「誰もが美しい心を持っている、それを引き出せますか?」と聞いていました。
そして、「社員の意識を変える力のある人、社内にフィロソフィを浸透できる人がトップになるべきだ」と強調し、「フィロソフィを身につけて、実行できる人がトップになるべき」「社員のやる気が起こるようにする、意識を変えられる人がトップになるべき」と説いていました。
これらの言葉は経営の本質を突いたものであり、稲盛さんが京セラやKDDI、そしてJALで実践し、証明してきた真理でもあります。
稲盛さんは、京セラ・KDDI・JALで「全社員の心をよくすること」に精力を注ぎ、その結果、3社ともよい業績の会社になりました。だからこそ、「心を高める。経営を伸ばす」と語り、リーダーの最大の仕事はフィロソフィを浸透させ社員の心をよくすることだと教えているのです。