「きちんと説明しない政治は要らない」

不穏な空気を感じた石破首相は選挙戦終盤の10月23日、愛知県内での遊説で、「悪夢のような民主党政権」という安倍晋三元首相がよく用いた表現で野党を批判した。

石破氏は2021年に自身のブログでは、安倍氏に対し、「いつまでも言っていると、『他党との比較ではない。きちんと説明しない政治はもう要らない!』との大批判を浴びることは必定だ」と諌めていた。これほど過去の他人への批判がブーメランで返ってくる首相は珍しい。

石破自民党は、きちんと説明しない政治、との大批判を浴びながら、投票日を迎える。自民党派閥パーティー収入不記載事件に関与した旧安倍、二階両派の前議員ら46人は厳しい審判を受け、28人が落選した。

非公認となった10人のうち、萩生田、西村、平沢の3氏は小選挙区で勝ち上がったが、下村、高木両氏ら7人は当選ラインに届かなかった。公認されても比例重複がなかった34人のうち、武田氏、丸川珠代元五輪相ら20人が涙をのんだ。離党勧告処分を受けて離党し、無所属で参院から衆院和歌山2区に鞍替え出馬した世耕弘成氏は、不記載事件を受けて不出馬を決めた二階俊博元幹事長の3男で自民党公認の伸康氏を破って当選した。

自民党は、背に腹は代えられないと、国会会派にこうした無所属で当選した議員を取り込もうとしている。萩生田、西村、平沢、世耕4氏に加え、自民党公認候補を破って無所属で当選した三反園訓、広瀬建両氏に働きかけたほか、解散前に結成した衆院会派「有志の会」の吉良州司ら4氏にも自民党会派入りするよう折衝を続けている。

ただ、仮にこれら無所属議員10人が加わっても、衆院過半数には及ばない。

曇天の国会議事堂
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「石破は短いかも。高市、用意しとけ」

派閥・旧派閥別では、10月30日の読売新聞によると、旧安倍派は出馬した50人中22人の当選にとどまり、往時の勢いはない。麻生派が最多の31人(立候補40人)を当選させ、旧茂木派が27人(同33人)、旧岸田派26人(同35人)、旧二階派22人(同26人)と続いた。旧森山派は7人(同7人)だった。

今後、自民党内の「反石破」勢力はどう動くのか。その核は高市早苗前経済安全保障相なのだろう。今回の衆院選で総裁選の推薦人に名を連ねた前議員11人のうち7人が落選・不出馬に追い込まれたが、その人気はなお維持している。石破首相が衆院選で応援演説に駆け付けた与党候補の小選挙区の戦績が13勝63敗だった、と29日の産経新聞が報じたのに対し、高市氏は31勝28敗と勝ち越した、と30日の日刊ゲンダイDIGITALが報じている。

思い起こされるのは、高市氏が総裁選翌日の9月28日、石破総裁から総務会長ポストを打診されながら、これを拒否し、党内野党の道を選択したことだ。10月6日のTBS報道によると、その後、総裁選で支援に回ってくれた麻生太郎党最高顧問(元首相)を訪ね、「自民党の歴史の中で3年以上首相を務めた例は7人しかいない。俺も菅(義偉副総裁・元首相)も1年で終わった。石破はもっと短いかもしれねえ。高市、用意しとけ」との助言をもらったという。

石破政権が持続するかどうかは、当面の内閣支持率次第だろう。今後の国会対策、来年の参院選をにらんで、菅氏や森山氏らがどう政権を支えていくのか。麻生氏や高市氏らがどう反転攻勢を仕掛けるのか。何があってもおかしくないという情勢は続く。

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